虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

妖刀戦争 その01



 倭島

 EHOにおける日本風の列島。
 今回、そこを訪れた俺はさっそく目的地に向かっていた。

「まあ、いろんな職業の条件を確認するいい機会だから、いいんだけどな……それにしても、どうして呼ばれたのやら」

 つい先日、職業の就職条件を把握できるようになったのだが、他者の職業であっても直接視認できれば調べられるようになった。

 なので東方、地域特有の文化が関わっている職業の就職条件に違いなどが無いのか、調べてみることに。

「──ってだいたいの確認は、行きの間に視て分かったけどさ。なるほど、星がある程度就くことができる職業を、場所ごとに変えているんだな」

《アイスプルには星としての特有の職業が存在しない代わりに、初期設定として存在するあらゆる職業に就職可能です。そして、そのリストが【救星者】の“職業系統樹”を通じて旦那様に反映されております》

「初期設定……というとアレか、『超越者』とか【探検者】みたいな冒険世界だけのアレコレだよな。まあ、職業の配置で風土を調整するみたいな目的があるのか」

 俺が初期から大変お世話になっているスキル:DIY:は、必要とした生産に関する技術を(許された範囲で)どんなものでももたらしてくれる。

 だがそんなチート染みた能力は非常識で、本来ならばある程度の制限が設けられる。
 生産職であれば、その職業に応じたレシピなどが浮かぶのだが……ここがポイント。

 就職可能な地域、そしてそれに必要な素材などを設定したレシピを調整すれば、当然そこでそのレシピが使用されるわけで。

 倭島、というか仙境などのアジア系の風土に合わせた品々を作れる職業が、その独特な文化を構築する地盤になっているのだ。

「──まあ、日本風の場所があって困る人は居ないからいいんだけどさ。それじゃあ、会いに行きますか」

 目的の人物たちが待つお城は、もう目の前にある。
 刀が無数に並ぶその建物へ、俺は足を踏み入れるのだった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「待っていたぞ、『生者』よ」

「ええ、【刀王】さん。それに──『辻斬』さんも、お久しぶりです」

「うむ、久方ぶりであるな」

 侍のような、というか侍そのものな男女が今回俺を招いた人々。
 片や一領土を統べる【刀王】、片や東方でも貴重な妖刀を打つ鍛冶師『辻斬』。

 彼らの共通点、それは刀に精通していること……そして俺は、彼らに貴重な刀を所有していることや、妖刀を打つ技術を持っていることを伝えていた。

 自分で言うのもアレだが、多少は信用もされている。
 ……うん、あんまり死ぬような用件じゃなければいいけど。


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