虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
職業相談 その15
せっかく得た【大富豪】の職業スキルと、それに伴う二つの職業能力。
両方の検証を終えたところで、常駐化を可能にするだけの経験値を集め終えた。
《“職業強化”発動──対象:【大富豪】。必要経験値を消費し、(時価専金)の常駐化を可能にします……成功しました》
「ふぅ、これで良しっと」
職業スキルを新たに獲得……というわけではないが、これで【大富豪】をセットしておらずとも能力を行使可能になる。
職業スキルは職業のレベルを上げれば、そのレベル分だけ恩恵が強まるからな。
つまり、俺はそのすべてをセットしておらずとも受け取ることができるわけだ。
同じことを休人/原人が行おうと、多重就職のペナルティとして獲得経験値が減少したり、一部の能力が使えなくなるなどの弊害が出てしまうだろう。
その点、俺は【救星者】にしか就いておらず、職業そのものは有していないのでギリギリ合法と言える……あくまで、【救星者】が稼いだ経験値を各職業に送っているだけだ。
「これでまあ、とりあえず終わったな……でも今思うとアレだな。どうせこんな風にアイスプルだけで解決したなら、わざわざ悩まずとも同じように他も職業スキルの常駐化だけできるようにすれば良かったんじゃ?」
《いえ。『騎士王』であれば、おそらく見抜くでしょう。彼女は冒険世界そのものとも繋がりがございます》
「違和感に気づくってことか? ふむ……なら仕方ないか」
職業のシステムそのものは、おそらく全世界共通のもの。
なので冒険世界にそのチェックをされてしまうと、【大富豪】に就いたことがバレる。
今回はバレても比較的問題にならなさそうな職業を選んだが、もし冒険世界固有の職業だった場合……うん、どういう判断をされていたか分からないな。
「とりあえず、次の職業に関しては後回しにするとして…………ずいぶんとまあ、様変わりしたもんだな」
《旦那様の投資は、今までSPの関係上後回しにしてきたものにも影響を及ぼしておりますので》
「特殊な力場の環境とか、そういうのもたしかあったよな……うん、条件を満たしていくのにちょうどいい気がする」
アイスプル世界の至る所に、さまざまな環境を生み出す溜まり場が存在する。
今までは設置されていただけで効果は特に発揮していなかったが、状況が変わった。
投資の力によって変化を促され、それに必要なリソースが供給されたのだ。
結果的に、アイスプル世界内部に新たな名所が誕生した。
そしてそこには、おそらく何らかの就職条件を満たすであろう場所も。
……せっかくだし、一か所だけ確認してみるとしますか。
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