虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
職業相談 その07
提案された五つの固有職。
その中にはお金ですべてを解決したり、メカドラやメカトラの真の力を解放する職業などがあった。
そうして俺は、新たな職業──【大富豪】に就くことを選んだ。
理由? ああ、ちゃんと決めてから就いているぞ。
「それじゃあ、やってくれ」
《畏まりました──“職業系統樹”を起動、職業を【大富豪】に設定……成功しました。職業スキル(時貨専金)を獲得しました》
就職も問題なくできた。
ただし、尋常ではないほどの経験値を消費しているが……【勇者】ほどではない以上、非戦闘職ということでお安くはあるようだ。
「正直、戦闘で稼ぐにしては固有職はかなりの時間が掛かるからな。だが、【大富豪】は金を使うだけで経験値を稼げる。俺の財産と合わせれば、一気にかなりのレベリングができるだろう」
それが俺の考え。
先んじて聞いていた他者への投資と事象の強化、それらにお金を注ぎ込めば注ぎ込むほど、【大富豪】は力を蓄えていく。
そして、俺自身『プログレス』や劣化蘇生薬の販売で荒稼ぎしているわけで。
無尽蔵と称すべきレベルの金を、一度に消化できるいい機会だった。
「使用する対象は、何でもいいんだよな?」
《はい。そして、その対象が得た金銭の一部が、旦那様にも自動的に還元されます。これは実際の収益とは関係なく発生しますので、揉めることはございません》
「……それはそれで揉めそうだけど。あと、何でもいいってことは人じゃない、自力で金稼ぎができないモノにも使えるはずだが、その場合はどうなんだ?」
《そういった場合、その対象を用いて他者が得た利益の一部が還元されます。土地を例に挙げますと、肥沃にした土地から得られた薬草の売上の一部が、旦那様に還元されるという形になるかと》
同様に、その土地を魔物が生息区域にした場合、俺に利益が入ってくるらしい。
それも金銭なのかと思ったが、さすがに魔物はお金を持っていないからな。
《魔物の場合、土地の利用費として先制攻撃の権利を剥奪します。専守防衛、攻撃は許されません》
「……かなり強い縛りだな。まあでも、やられそうになったらきちんとやり返せるだけ、まだマシな方なのかもな」
《また、土地での戦闘によって魔物が得る経験値の一部が旦那様に入ります》
「…………不労所得だな、マジで」
いちおう魔物にも伝わる形で、その条件は提示されるらしい。
それでも受け入れるというのであれば、それでいいわけだ。
あとは煮るなり焼くなり、というか何らかの形で素材を集めればそれが金になる。
向こうから攻撃はできないので、その辺は交渉次第といったところか。
……ある程度説明も聞いたし、それじゃあ試してみますか!
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