虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
職業相談 その05
冒険世界 始まりの街 冒険ギルド
世界や地域特有の職業に興味を持ち、とりあえず解放はしておこうということになったわけだが……その一つは、名称的にいろいろと複雑だったりした。
「……特に何のイベントも無く、あっさりと就職できたな」
《旦那様が生産ギルドの特急会員であることは、一定以上の階級以外には秘匿されております。わざわざ個室へ招くなどして、事を大きくしないのは当然と言えましょう》
「…………道理で、顔がやや引き攣っていたわけだな」
俺と『SEBAS』との会話でお察しできると思うが、すでに冒険ギルドを訪れて就職手続きを済ませている。
ギルド会員しか就くことができないらしいが、そこはまあ権力のごり押しで。
言われるがまま、転職がしたいと生産ギルドのカードを見せれば了承してくれた。
あとは受付すら入れない部屋で一人、就職の処理を済ませるだけ。
定番の水晶に触れるというアクションで、俺はいくつかの職業を新たに解放した。
「ただ……説明曰く、上級職に就く際や離職後に再就職する場合はもう一度来る必要があるって言っていたな。それ、俺の場合はどうなるんだ?」
《問題ありません。旦那様の場合、アイスプルが提携を結んでいる星の限定職業であれば【救星者】の“職業系統樹”内で、その他の職業同様の変更が可能です》
「逆に言うと、まだそれができていない世界の職業はダメなのか……武闘世界とか魔法世界とかみたいな」
《いずれ旦那様が訪れることで、向こう側も何らかの形で干渉してくるでしょう。それを乗り越えたとき、あちらの世界の職業も自在に就くことができるようになるはずです》
冒険世界はともかく、基本的に各世界はそれぞれの名が冠する分野に特化している。
であれば、そこで就ける限定職業にもそれなりに期待ができるわけだ。
「それじゃあここからは、得た職業の職業スキルを常駐化するための経験値稼ぎだな。あと、忘れていた職業の解放も」
《よろしいのですか?》
「ようやく【勇者】の解放が終わったんだ。就ける人数の多い職業なら、大目に見てもらえるだろう」
職業スキルの常駐化、それには各職業で稼いだ経験値を注ぐ必要がある。
そしてそれは、階級が高い職業であればあるほど高くなっていく。
ここ最近の慌ただしい日々で、ようやく一番時間を掛けていた【勇者】の職業スキルの完全強化が終わったのだ。
少しぐらいハメを外し、制限数の多い職業の一つぐらい手にしたっていいだろう。
……まあ、それにはちゃんと手順を踏まないといけないんだけどな。
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