職業相談 その03

　リストラには会社側が相当な代償を支払わなければならない、そんなＥＨＯにおける職業システムに複雑な心情を抱いた。

　そりゃあ就いている側からすれば大助かりかもしれないが、それを剥奪せねばならない立場にいちおうでもある俺にとっては、厄介としか捉えられないわけだな。

「星が引き剥がせるのは、星が直接認めて任命した職業──騎士王の【鑓星】だったり、ショウの【剣星】だったりだな。それ、俺にも任命できるのか？」

《……任命には条件達成が必須ですので、旦那様は指名できませんよ》

「うぐっ。それはどういうものなんだ？」

《スキル、その条件に関する武器や魔技の行使回数、そして才能によって選考されます》

　ＥＨＯの凄いところ、その一つとして挙げられる才能の反映。
　まったく同じビルドでも、やっていることが同じでも成長速度が違うなど。

　タクマがかなり念入りに情報を調べ上げ、本当なのだと分かったことだ。
　先の件であれば、『騎士王』やショウの才能が求められる基準に達していたわけだな。

　……いやまあ、『騎士王』に関しては鑓というかありとあらゆる武器に関する適性がありそうだけども。

「じゃあ、生産関係なら……」

《…………》

「ああうん、言わなくていいや。所詮、俺自身にはそういう才能は無いってことだろう」

　それは自覚していることだからいいけど。
　すでに職業の追加や“千変宝珠”の練習で何度も試し、自分自身で行った場合の技量の限界は感じていた。

　正直、俺みたいな人種が創作物だと闇堕ちするのかな……なんて思いつつ。
　そういうことはとっくの昔に解決していることなので、特に深くは考えない。

「適性が無きゃ死ぬわけじゃないし、俺は俺のままやれることをやるだけさ」

《……旦那様》

「だからこうやって、やれることを模索しているわけだしな。現実でも大黒柱に……なれているかはともかく、こっちでも困ったときに馳せ参じられるような力は欲しいよな」

　まあとりあえず、【〇星】と付くチート級職業は無理なのだろう。
　これができればかなり楽だったのだが……うん、努力あるのみだな。

「強制解放系の手段って、そういえばもうやり尽くしたのか？」

《旦那様の知人関係ですと、もうすでに。ですが、それらによって条件を解放な職業はまだいくつかございます》

「よし！　簡単なものでも、増やしておいて損はない……というか、就職数そのものが条件で得られる職業なんかもあるかもしれないから、どんどん就いていこう！」

　それこそネタ職業だろうが、俺にとっては好都合。
　強制就職、一般的には害でしかないが、俺の場合はケースが特殊だからな。