虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その20



 単独で行うことになった、パシフィス世界の復興プロジェクト。
 完全に再現するのであれば、ファンタジーなお城まで作らなければいけない始末。

 ただし、:DIY:がその都度さまざまな知識をもたらしてくれる。
 なのでそれらを駆使しながら、本来の目的である新技術の獲得も行っていった。

「──こ、これは!」

『おぉおおおお!!』

「お喜びいただけているようで。皆さんのご期待に沿うことができているのであれば、幸いです」

 プロジェクトを実行し、すでに数週間が経過している。
 自浄の期間が済んだからか、本日住民たちが星亀の下から帰ってきた。

 そして、彼らが目にしたのは──かつてとほとんど変わらない光景。
 俺はやり遂げた……一時期は栄養ぼうそうドリンクすら飲んで、すべての修繕を終えたのだ。

 少なくとも、彼らが覚えている通りの街並みと外見上の違いは無いはず。
 家具やら位置などを細かく気にしないのであれば、それで充分だろう。

「なんとお礼を申し上げればよいのやら……まさかこの短期間で、この世界を元通りにしていただけるとは!」

「いえいえ、礼には及びません。皆さんのこの世界に触れ、私もまた職人として一歩前に進むことができたのですから」

「なんと、職人でしたか……たしかに、屋台で貴方様は子供たちに食事を振舞っておいででしたね」

「ライバルがたくさんいて驚きましたよ。ですが、これからは皆さん万全の状態で調理をすることができますよ」

 うん、主に獣頭種以外の、『否定』された概念の擬人化みたいな人々が、さまざまな料理を振舞っていたからな。

 各分野……というか、一品に特化しているものだから、ある意味一番成長したのは調理技術だったのかもしれない。

 彼らが持ち出せなかった屋台や調理器具なども、ばっちり解析させてもらったし。
 次に俺が屋台をやるときは……さて、何を作ればよいのやら。

「調理に加工に、建築まで……貴方様は多芸であらせられますね」

「ははっ、偶然ですけどね。それよりも、私はその多芸を磨くためにこの世界を訪れました。私が愛し、私を愛してくれる家族のためにも、己の世界では知ることの無い、未知の技術を学ぶため」

「そういうことでしたら……私どもは、貴方様への技術提供を惜しみませんよ」

「ありがとうございます。私の場合、とある神話のさる御方の御業によって、皆さんのお手を煩わせることはほとんどありません。どうか、触りでなくとも構いません、ヒントをいただけますでしょうか」

 結局のところ、彼ら自身に聞くことが一番の成長に繋がるのだ。
 真摯に頭を下げて求めるのは、彼らの技術に関する情報。

 創造神様の:DIY:も部分的に開示し、失名神話の宣伝も忘れないようにしている。
 俺のやっていることはほぼチートだし、技術継承などを任されても困るからな。

 そんなこんなで、もうしばらくこの地で技術に関するお勉強を行うだろう。
 それが終わったとき、俺は間違いなく成長できるはずだ。


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