虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その18



 パシフィス世界の住民に、ようやく接触することができた俺。
 途中で屋台をやったりしつつ、本来この世界では『否定』されているはずの人と話す。

 まあ、厳密に言えば人ではなく、人に似たナニカなのだろう。
 残念ながら、俺の低スペックな鑑定スキルではその真相を暴くことはできない。

 ともあれ、目の前の人物(?)を相手に俺は進めていく。
 誰であれ、パシフィス世界にとって主要人物(?)であることに変わりないからだ。

 なぜなら誰に尋ねようと、彼──ヒトおじさんを紹介している。
 うん、人という存在がまったく無いというわけじゃないみたいなんだよな。

 今回のことにはあまり関係ないので、それについては気にしないでおく。
 パシフィス世界の現状を伝え終え、俺はこれからの話を進めることに。

「確認なのですが、皆様はすぐにここから元の世界に戻ることは可能なのですか?」

「いや、無理ですな……何より、向こうはすでに崩壊しているのでしょう?」

「ええ。残念ですが、バシビウスを排除するために少々の無茶をしてしまいましたので。植物から建物まで、彼らの寄生先すべてを消し去らなければ駆除はできませんでした」

「そうですか……元より帰れないことを覚悟していました、ですので貴方様の行いを感謝はすれども責めることなどできません」

 掃除機でバシビウスを吸い込んだが、その際に植物や仮設住居なども吸い込んでいた。
 あのときはあまり認識していなかったが、その被害は文字通りの世界規模だったのだ。

「しばらくすれば、星亀様が大地に恵みをもたらしてくれるでしょう。少しずつ、また向こうへ戻ることになるはずです」

「ここにずっとは居られないので?」

「無理ですね。星亀様は許可をいただいてここに居るのですが、それは向こうの問題が解決するまでとのことでした。時間経過で解決すると言われておりましたが……貴方様のお陰で、それはすぐに解決しました」

 バシビウスのはかない寿命を、星亀こと俺命名『載星宙亀プラネットタートル』は現れたその間にしっかり把握していたらしい。

「……いえ、まだ足りませんね」

「た、足りない……とは?」

「いえ、バシビウスの排除のためとはいえ、あちら側の世界を無茶苦茶にしてしまったのは紛れもない私ですので……あの、よろしければご協力していただけませんか?」

「それは構いませんが……具体的に、どのようなことを?」

 俺が復興をしようとしていることは、すぐに分かってもらえたようだ。
 だが俺にはできず、彼に頼むことでできるようになることがあった。

 ──そう、俺は少なくともバシビウスが訪れる前のパシフィス世界を知らないのだ。


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