虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その11



 吸引力の変わらない唯一無二の掃除機により、侵略者バシビウスたちはパシフィス世界から強制的に退場されられた……今は掃除機内部に広がる、格納空間の中だろう。

 処理に関しては、『SEBAS』にお任せする予定だ。
 前回は『騎士王』と共に殲滅したが、今ならばまた異なる使い道を選んでくれるはず。

 そんなこんなで、あとは霧が流入している空間の罅をどうにかするだけ。
 なお、掃除機は今なお稼働中で、こちらの世界に入ってきた霧を吸っている。

 だがそれ以上は、世界の隔てりの影響か吸い込むことはできなかった。
 なので俺がすべきこと、それはこれ以上霧が入ってこないように防ぐことだ。

「世界の狭間に干渉して、それを塞ぐために必要なこと……さて、どうしようか」

 前回は『騎士王』が居たからこそ、どうにかなったわけだが。
 ついでに言うと、あのときは中継点を潰したからこそどうにかなった。

 だが今回、同じように中継点を向こう側で潰すという選択肢は少々難しいだろう。
 先ほども言ったが、アレは冒険世界最高の存在が居たからこそ、できたこと。

 神すら死に絶え、星の理すら蝕まれた滅びの世界に身一つで入れる方が異常だ。
 あのときの俺は、彼女の影響下にあったからこそ生存できていたに過ぎない。

 分かりやすく言うと、『騎士王』は存在そのものが常駐型の『星域』のようなもの。
 彼女自身が冒険世界の体現者、ゆえにどの世界であろうと十二分に力を振るえる。

 意図してカットしていたイベント世界での交流試合などならともかく、アンノウン世界ではその力によって、俺を保護しながら無双していたわけだ。

「なら、俺も『星域』を使えばって話になるけども……これがどうにも上手くいかないんだよな」

 星の理に干渉するからだろう、基本的にそれは上手くいかない。
 かつて『SEBAS』が密告してくれた、星同士の通信のようなもの。

 アレでアイスプルを受け入れてくれた世界でのみ、『星域』は正常に作動する。
 可能なのは冒険世界とイベント世界のみ、アンノウン世界は当然対象外だ。

「さて『SEBAS』、世界に干渉することができる『プログレス』は、現状存在しているのか?」

《残念ながら、破壊であれば可能ですが、それでは罅は無くなるのではなく増大してしまいます》

「キーシ……いや、『破天』の『ブレイクグローブ』と権能を称号効果の組み合わせみたいなものか。うん、直したいんだからそれは無しで。ハァ、『プログレス』以外でもいいからいい方法は無いか?」

《ございますよ》

「…………ん?」

 聞き間違いだと思ったが、[ログ]を見ても『SEBAS』の発言は変わらない。
 あったんだ、方法……さて、どういったものなのやら。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く