虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
対家族製作 その06
パシフィス世界特有の法則を調べるため、『SEBAS』に解析を行ってもらった。
俺が見ても分からないことが多いし、困ったら頼るに限る。
《解析完了しました》
「おお、それで結果は?」
《身力・能力値共に変化はございません。同様に、スキルや称号の効果も問題なく作用しています。『生者』の即時再構築は、この世界でも可能でしょう》
「……ん? 全部が問題ないってわけじゃなさそうだな、何ができない?」
聞く限り、ほとんどの法則は冒険世界やアイスプルなどと同じようだが。
他に言っていないもの、アイテムや魔法などもあるが、俺に関係するものなら──
「…………祝福か?」
《さすがは旦那様、ご慧眼です。どうやらこの世界において、神は『否定』された存在なのかもしれません》
「だから祝福の影響が届かないと……ふむ、仮設通りなのかもしれないな、この世界は」
何度も語っているが、パシフィス世界もとい俺たちの世界におけるパシフィス大陸とは存在を『否定』された世界だ。
それはレムリアも、かなり有名なムー大陸も同じなのだが……パシフィスの場合、その知名度もはっきり言ってしまえば低い。
元より、ムー大陸の焼き増しとも認識されるような扱いだ。
これといった話題も存在せず、俺が調べても細かな情報は見受けられなかった。
「祝福が届かないってことは……ああ、死神様の加護も、ルリの祝福も無くなってる。でも、風兎たち星獣や聖獣様の加護、それに星の加護はそのままなんだな」
《奥様は人であるため除外され、風兎たちは動物型であるがゆえにそのまま残されているのでしょう。星の加護は言わずもがな、星の存在は『否定』できないからです》
「あくまで自分たちを『否定』した存在を、逆に『否定』してやろうってことなのか。その割には、結構流用している理も多い気がするが……それはそれで好都合だし、ある意味人の業って感じがするからいいか」
都合のいい理解、いわゆるご都合主義。
そういった人の認識もまた、『否定』の解釈に引き継がれているのかもしれないな。
開いた[ステータス]を自分で確認してみると、たしかに『SEBAS』が説明した通り、祝福の欄から神々やルリから貰った祝福が消失している。
「種族が【普人】から【人(普人)】に変更されているな、これはどういうことだ?」
《この世界に人族が存在しない以上、どのような定義で【普人】であるのかを識別できないからでしょう。旦那様の知識に当てはめるならば──地球人がどのような人種であろうと転移後は異世界人であることと同じです》
「おおっ、分かりやすい。なるほど、今だけは俺が人類代表なわけだ」
なんて会話をしながら、俺たちはドローンが空撮を終えるのを待つ。
……この世界を先に知っておかないと、痛いしっぺ返しを食らうかもしれないからな。
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