虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その03



 マイへの対策を考えてみたが、さすがに悪臭で勝つのはどうかという結論に至った。
 現存する従魔師対策は、やや兵器染みている点があるので、その改良も必要になる。

「…………ルリの対策はなぁ」

《はい》

「アイスプルであの結果だったんだから、もう無理なんじゃないかな?」

 ルリが命運神として信仰されているのは、彼女がプレイしている冒険世界が主だ。
 そうではない世界において、届く信仰の力は減衰して本来の力は発揮できなくなる。

 ……だというのに、この世界でもルリは極めて高い神威を発揮していた。
 そりゃあ俺は祈っているし、神像も置かれているが……それでも強過ぎるのだ。

 仮にルリとまた戦うのであれば、冒険世界あるいは神威の減衰がアイスプルよりも少ないイベント世界となるだろう……今回以上に苦戦するのは間違いない。

「状態異常対策はされているだろうし、何よりルリの運がそれをもう学習しただろうからな。純粋な神殺しの武器でも、一つ打ち上げてみる方がいいのか?」

 失名神話の神、脱獄神に通じた魂を切り裂く[モルメス]ぐらいだろう。
 俺の持っている武器の中で、確実に神クラスの存在に攻撃が通じる武器は。

 しいて挙げるなら、称号で『貧弱な武力』と『闘匠』をセットすればシステム上の攻撃は通るようになるだろう……スペックの差的にほぼ無意味だろうが。

「神殺しか……失名神話の恩人もとい恩神の皆様を思うと、率先してやりたいとは思わないんだけどな」

《ですが旦那様、失名神話の復興を図るということは──》

「それを望まない神々と、何らかの形で戦わなきゃいけないってことだしな。切り札の一つとして、持っておいて損は無いのか」

 魂に干渉する技術は、『SEBAS』が確立させている。
 なので[モルメス]と同じ系統の武器ならば、いくらでも量産できるのだが……。

 問題は、魂に干渉するという手段で本当に神々に対抗できるかという点だ。
 いちおう脱獄神には通じたが、彼の存在は抜け神として弱体化していた。

 上位の神々でなくとも、ある程度の格を有していれば通じないのではないか……という懸念がある。

「これについて神様に直接聞くのは……まあマナー違反だろうし、時々感じられた発言の制限にも繋がるだろう。とりあえず、これもまた研究すべき課題だな」

《畏まり──》

「研究はするが、実験はするなよ。さすがに神殺しだから、やるにしても実地だ」

《……承知いたしました》

 言わずとも分かってくれていただろうが、最短最速を求めればそうなるのだろう。
 だが、俺はそれを是としない……支払うべきは敵となる存在だけで充分だ。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く