虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その02



 ショウへの対策……はひとまず諦めた。
 なんだかんだ、万能な性質を持ち始めているからである。

 既存の技術や理で対抗するのは難しいと判断し、レムリアのように特殊な理などでどうにかできないかと今は考えていた。

「さて、次はマイだな……いちおう、万全な状態以外での対策を提示してくれないか?」

《お嬢様は優秀な従魔の方々をお持ちです。彼らを呼び出す前に展開を封じるのが、やはり王道かと》

「まあ、たしかにな……付随枠に限界がある以上、戦闘時に相対する従魔もいちおうは限りがあるわけだし。パーティーとして平時に傍に居られる数はさらに少ないし」

 付随枠以上の従魔を展開すると、得られる経験値がゼロになったり常時デバフが展開されてしまう……数が多ければ多いほど、従魔師は魔力を急激に減らしてしまう。

「邪道なら、五感を狂わせるアイテムの準備かな? それでも心眼みたいな能力を使える従魔が居るなら、大した妨害にもならないだろうな……だが、大半の個体は抑えられる」

 従魔の特徴、それは人族に比べて身体能力の基礎スペックが高いこと。
 能力値という意味ではなく、生まれ持っての体の強靭さという意味で。

 竜などが一番分かりやすいが、彼らにとっての1と人族の1の力はまったく違う。
 それは五感や身力の質にも関わっており、同じ能力値でも魔物の方が強くなる。

「何より、従魔一体となる職業能力を封じることができる。ふむ、絆を最大限まで結ばれているとどうしようもないけど、そうじゃない個体なら指示を完全に把握できないようにできるかもな」

《そういったアイテムであれば、存在しております。従魔師の存在は戦力差を大きく覆すものであるため、過去彼らに対するアイテムが生み出されていたようです》

「まあ、それは考えるよな……いつだって、人の技術を飛躍的に進めるのは戦いだ」

 その恩恵にあやかっていない者は、極めて稀ではなかろうか。
 主に通信技術、こちらの世界であれば強力な魔法など……戦いがそれらを求めた。

 平和になったあとも、それらは形を変えて人々の生活と共にある。
 そして時に、人々を傷つけるような使われ方をしていた。

「まあアレだな、使うにしてもその後の悪影響について考えておかないと……お酢を撒いた時のような面倒ごとは、もう二度とごめんだからな」

《畏まりました、条件に一致するアイテムを新たに設計します》

「悪いな、けどこれぐらいはやっておかないと。あと、それを使わないで戦う時のやり方もやっぱり考えておかないと」

 妨害をして、お父さん最低とでも言われたらその時点で緊急[ログアウト]をしてしまうかもしれない……うん、正攻法で挑む必要があるな!


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