虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

改善生産 後篇



 ショウ、マイとこれから必要になりそうなアイテムを生産している。
 従魔を使役するマイには、どんな魔物にも対応した『魂殻』をプレゼントしておいた。

「っと、すぐに返信が来た……おおっ、喜んでくれたぞ『SEBAS』!」

《それはそれは、良かったですね旦那様》

「ああ、こりゃあめでたい。明日にでも盛大にパーティーをやるのもいいかもしれない。だがその前に……やるべきことがある」

 そう、一番の最難関──ルリ用のアイテム作りだ。
 必要云々ということもあるが、何より神器級の代物が必要になる点が特に難しい。

 ルリが新人神である以上、いつかは神々と相見える可能性が高いのだ。
 ……失名神話の皆様ならまだしも、他の神話がどう動くか分からないからな。

「さて、ルリに何を送るかだが…………装飾品はダメだな。こういうときじゃない、もっと別の時がいい」

 まあ、俺の個人的な主張はともかく、改めて具体的に何が必要なのかを考える。
 ……運が良いルリなので、大抵のことは何もせずともどうにかなってしまうからな。

 今回の家族イベントも、障壁を張るだけで基本的にどうにかなっていた。
 俺との戦闘は、特殊過ぎる状態異常に敗北してしまっただけ。

 だが状態異常など、本来ルリがどうとでもできる分野だ。
 彼女は現人神である前に、そもそも回復職だからな。

「ルリの種族はたしか……【星宝獣】、だったよな。つまり、宝石を触媒にいろんなことができるわけで…………『SEBAS』、何か無いか?」

 俺の想像力ではどうにもなりそうになかったので、正直にヘルプコール。
 宝石を加工し、特殊な効果を引き出すことができる……それ自体は俺も知っていた。

 だが宝石のカッティング、刻印、付与する魔力属性などで効果は大きく変化する。
 それらの最適解を俺が知るわけもなく、頼る他ないのだ。

《旦那様はどのような用途になると?》

「大前提として即死無効、そのうえでエネルギーの充填ができるといいな。神気にも対応しているとなおOK」

《調べてみましょう──見つかりました》

「早ッ!」

 適切な宝石、最高のカッティング、相応しい刻印などを組み合わせればできるようだ。
 宝石もカッティングも刻印も、:DIY:がすべて何とかしてくれる。

 出来上がったのは、現実ではあまり見たことのない上から見ると星型に見える代物。
 内部で星のように光が放たれており、角度によって異なる星座が輝いてみえる。

「:DIY:で用意できた以上、自然界に存在するんだよな……」

《『星隕石』、天より降り注ぐ星の恵みと呼ばれ通ります。隕石であり、そして他世界の一部を取り込んでいるため、異なる世界で一部の理を持ち込むことができるようです》

「……よく分からんが、凄いってことか。少し、増産しておこうか」

 理の持ち込みは便利そうだし、作っておいて損は無さそうだ。
 レムリアのような場所でも、これなら頼りにできそうだしな。


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