虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

改善生産 前篇



 アイルプル

 俺がトイ……『お花を摘み』に行っている間に、人の恥ずかしいシーンを家族一同で観賞していた事件から数日。

 いやまあ、あからさまに隠した俺も悪いんだけどさ。
 だからって、本人が離れた場所に居るからと堂々と見るものですかね?

 俺が部屋に戻ってきたときの反応ときたらもう……溜め息を吐き、気分をリセット。
 すでに[ログイン]しているのだ、やることをやらなければならない。

「前回の試合で、家族全員の問題点が判明したからな……その対策を用意しないと」

 正直、俺が何もしなくとも自分たちでどうにかしてしまいそうではあるが。
 だが、それを理由に何もしないというのは間違っていると俺は思う。

 使われないにせよ、とりあえず俺なりに何かをしてみようという気概が必要だ。
 そんなこんなで、モチベーションも高々に生産作業に従事していた。

「ショウはそうだな……必要な装備品は、知り合いの休人が作ってくれるだろうし、消耗品が一番かな? それこそ、長期的な戦闘もあるだろうから連続使用ができるタイプを」

 作る際は:DIY:を使い、確実に超高品質のポーションを生み出していく。
 性能の劣ったポーションは、何度も使うと中毒症状を起こしてしまう。

 その状態でポーションを飲むと、最悪即死級のダメージを負うことすらある。
 だが質の高さを極めても、本来は中毒症状の発生を完璧には抑えられない。

 ……:DIY:は生産の極致、不可能だと思われていることすらも成しえてしまう。
 今の世界の技術では困難であろうとも、未来であれば可能なのかもしれないな。

「まあ、作る工程は『SEBAS』が解析してくれているから、少しずつ再現性は増しているみたいだけども」

 部分的に劣化しながらも再現し、それらの情報を生産ギルドに流している。
 さらにその一部が生産世界に回され、こちらとの情報共有の糧となっていた。

 創造神様の権能である:DIY:がある以上、究極的に言えば俺にとっては不要だ。
 しかしそれをショウの知人が使う可能性もあるので、あえて行っている。

「よし、蘇生薬と万能薬を一ダース。それに魄癒薬と魂癒薬として薄めるための錬金水の完成だ。ショウはあんまり強化ポーションが好きじゃないみたいだし、ドロップ率が上がるラックポーションだけ用意しておこうか」

 LUCを上げておけば、自然とドロップ率も向上する。
 他にも効能はあるだろうが……まあ、役得とでも思ってもらおう。

 ──そうしていくつかのポーションを作り上げた俺は、転送装置へとそれらを詰め込むのだった。


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