虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント後篇 その14
ジンリの『ドミネイトテリトリー』を勝手に拝借し、ルリへの対策として利用。
これにより、少なくとも人並みぐらいの戦闘がギリギリできるようになった。
先ほどまでは、喋るだけで舌を噛んでそのまま死にそうだったからな……再び思念での発動は控え、口頭での発言を再開する。
「──[最敵]」
そんな俺が取り出すのは、一振りの妖刀。
内部に『マルチプルセンサー』が搭載された、嫌がらせに特化した刀だ。
この妖刀を使う利点は、自分自身で動かずとも戦えること。
俺の行動すべてに、現状五桁のLUC値負債が掛かっている現状ではそれが必須だ。
ルリのご都合法則(仮)は封じられても、LUC値のマイナスは変わらない。
なので常識的な不幸(?)ならば、まだ起き得る可能性が残っていた。
そして何より、LUCの問題を解決してもルリ自体の戦闘力は変わっていない。
ルリもLUCは下がっているはずだが、そこには何ら期待できないからな。
「行くぞ、ルリ!」
「ええ、掛かっていらっしゃい」
妖刀がルリの隙を調べ上げ、そこを突こうと俺を導いていく。
同時に、『SEBAS』が俺の体を操りながら戦闘情報を蓄積させる、
それでもルリの神威交じりの魔法の力は、単純な武術だけでは突破できない。
何度も攻撃を畳みかけているが、強力な障壁が立ちはだかりそれを防ぐ。
「なら──『星攻化身』」
手袋を嵌めて指を鳴らすと、どこからともなくさまざまな魔物たちが発生する。
特殊生産部門で創った『星革の手袋』、その能力によって生み出された存在だ。
中には竜などの強大な個体も含まれ、それらが一気呵成に障壁に攻撃を行う。
ショウの攻撃同様、そのすべてが星の力を纏っているため──少しずつ罅が広がる。
「そして──『星転飛流』!」
ショウはそこから苦労していたが、俺はまた別の手段に打って出た。
勢いよく地面を踏みつけて、そこから大量の水を生み出す。
聖水や毒水なども作れるが、今はただただ自然界の激流をイメージしての生成。
それを向ける先は、少しずつ広がっている罅──強引に中へ水を押し込んでいく。
「これで、障壁の中に居続けられなくなっただろう?」
「さて、それはどうかしら?」
水が障壁の中いっぱいになった。
しかし、ルリは水の中でも笑顔のまま……なぜだろうかと考えたところ、そういえば種族は人族じゃなかったなと気づく。
ルリのは【星宝獣】、元となる種族は精霊系だったし、環境への適性が高いのだろう。
要するに、水底だろうと最悪マグマの中だろうと平然としてられるかもしれない。
──あるいは、体力の減少を回復魔法で強引に治しているの可能性もある。
まあともあれ、水攻め作戦は失敗……そろそろアレを使うことにしよう。
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