虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント後篇 その09
ルリの幸運が生み出すご都合主義的ノックバックに、ショウは剣の入れ替えを選択。
片方はノックバックの発生を抑える能力を持つ剣、もう片方は──
≪アレは、呪いの武器ですね。なんというか禍々しいオーラが、目に見える気がします≫
《かつてショウ選手は、殺人鬼との戦闘を経験しております。その際にドロップした剣こそ、現在装備している『咎の血鬼剣』となります》
ショウの持つ血のオーラを纏わせる呪いの剣、しかし星のオーラがそれを包み込むことでその影響のいっさいをショウに届かないようにしていた。
≪……どうやらあの剣の能力に関しては、間接での使用は難しいようですね≫
《呪いのような力の場合、装備しなければ効果は発動しません。さすがに特典と言えど、ノーリスクで呪いのアイテムを利用するようにはできていないようですね》
≪まあ、ショウ選手は何らかの方法で無効化しているようですけども。組み合わせによって、補うシナジーのようなモノが生まれているわけですね≫
要するに、呪いの武器としてデメリットを無視したうえで、その分強化(狂化)している高性能な能力だけを利用できる。
まあ、【剣星】か『剣皇』の効果だろう。
ちなみに、剣の効果は相手が人族の時に限り、防御を無効化するというもの……たしかに便利だが、ルリ相手だと無意味に等しい。
彼女は聖職者であり、現人神その人。
本気で浄化しようと思えば、ただ念じるだけで呪いを払うことだって可能だからだ……それでも、今はまだ浄化されていない。
それこそ星のオーラを上手く使い、浄化を払いのけるために用いていた。
そして、このタイミングにすべてを掛けたのだろう──オーラが爆発できる増える。
「──“オーバーブレイブ”!!」
全能力値を十倍にするショウの奥の手。
発動の代償は、終了時の確定死……使い続けることで時間はやや延長されているが、どれだけあろうとルリ相手には短い。
ルリもショウの覚悟を見たのか、短剣を仕舞い今度は杖を取り出す。
同じく初期に渡したその短杖は、ルリの持つ力を増幅し、減衰ゼロで力を発揮する。
「──“神祈息吹”」
有する神々の祝福の分だけ、能力値に補正が入るという魔法。
だが、ルリの場合は当人が神でもあるため仕様も少し違う。
信仰されていればいるほど、補正値がどこまでも強化される。
休人からも原人から信仰されているルリなので、その数値はかなりのものだろう。
それでもショウは一発逆転の剣を握り締めて、勇猛果敢に挑む。
制限時間はあと数分ほど、それまでに倒すことができるのか?
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