虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント前篇 その18



 準決勝第一試合、勝者はショウ。
 ……いやいや、シャレじゃなくてな。

 ともあれ、これで決勝戦は対人戦になることが確定した。
 第二試合もまた、選手の双方が人族だからな…………うん、いちおう。

≪さぁ、準決勝第二試合を始めましょう! 選手たちが登場します!≫

 転送陣から現れるのは我が娘と妻。
 片や聖獣すら操る調教師、片や現人神として崇拝されている聖女というか開祖様。

 語ることがたくさんあるようで、舞台の上でいろいろと話している。
 ……プライバシーの観点から多くは語らないが、要は自分が勝つと宣言していた。

 二人が再び距離を取り、準備OKとルリが手を振る様子を見た後、カウントを開始。

≪0──それでは、試合開始です!≫

 マイはさっそく従魔を呼び出す。
 ルリもそれを妨害する気は無いようで、ただのんびりと見ているだけ。

 呼び出されたのは、初戦でも大活躍だった聖天狼と大量の従魔たち……なのだが、聖天狼の様子がおかしい。

≪解説の『SEBAS』さん、これはいったいどういうことなのでしょうか?≫

《アズル選手の現人神としての格に気づいてしまったようです。聖天狼は聖獣に属する存在ですので、神として神々しいまでに聖なる力を放つアズル選手に警戒を超えて恐れを抱いているのでしょう》

≪ここでルリ選手、何やら聖天狼に対して話しかけています……なるほど、どうやら自分は対戦相手だから攻撃してもいい、といったことを伝えているようです。聖天狼ウルさんも、この言葉で戦闘の意思を取り戻します≫

 むしろ、従わない方が不敬……みたいな考えに至ったのだろう。
 マイからの支援を受けたウル、そしてその他の従魔たちがルリへの攻撃を開始。

 対する彼女は『祈り』の構え。
 詠唱も何もしないその動作が──周囲にとてつもない聖なる障壁を生み出す。

≪おーっとこれはどうしたことか!? なんとルリ選手、攻撃のいっさいを寄せ付けない頑強な結界を張り巡らせたぞ!≫

《放っていた神気を聖気に変換、障壁として用いているようですね。性能は神気よりも劣りますが、神気1で聖気100は容易く賄えます。量で圧倒しているため、本来神聖な聖天狼の攻撃すらも弾いているのでしょう》

≪しかし……あの障壁、いっさいの詠唱をしておりませんでしたが。無詠唱、あるいは代替発動なのでしょうか?≫

《そうではありません。分かりやすくたとえるならば、アレは聖気版の魔力操作に過ぎません。聖気を展開し、壁とする。魔法でも何でもない、アズル選手の意思によって構築された代物です》

 理不尽過ぎる……だが、それゆえに現人神なのだろう。
 スペックが高過ぎる相手に対し、果たしてマイはどう挑むのか?


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