虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント前篇 その04



 エクリと風兎のエキシビションマッチは、時間切れにより試合終了となった。
 二人には盛大な拍手や咆哮が届く……後者は魔物なりの歓声みたいなものだ。

 そして、ここからは厳選なる抽選を経たアイスプルの住民たち、そして俺たち家族を含めた計八名によるトーナメント戦である。

 なお、俺たちとは言ったものの、俺自身は参加していない。
 さすがに死なないだけの俺が混ざるのは、どうかと思ってな……理不尽だし。

 二つの転送陣が、今なお舞台の上で俺からのコールを待っている。
 アナウンスと共に呼び出される仕掛けなので、さっそくマイクで実況を行う。

≪まずは赤コーナー、どんな物でも載せてみせます! それはまさに歩く攻城兵器、本日の初陣は君だ──[ドラグキャリー]!≫

 片側の転送陣が光り、その先で待っていた参加者を呼び出す。
 現れたのは巨大な地竜、翼を持たない代わりにより頑強な肉体を得た竜種。

 その背中には、無数の砲台やその他攻城戦で使うような武器や魔道具が載っている。
 近代戦にも対応した、ファンタジーな存在というなかなかに面白い存在だ。

≪さぁ、続いては青コーナー。見よ、これが冒険世界の剣星だ! 振るうはもう一振りの星の剣、担うは若き剣皇! 我らイツキ一家が第一子──ショォオオオオオウ!≫

 ノリノリで読み上げると、転送陣がやや先ほどよりも派手な演出を展開する。
 無数の剣(幻影)が現れ、剣の舞を見せたあとに中央へ集っていく。

 そして、中で高速回転をすると──少年がそこには立っていた。
 アナウンスが聞こえていたからだろう、やや頬を赤らめてこちらを見ている。

「ぷっ……くくっ、いいと思うわよ。あっ、私は止めてよお父さん」

「あら、いいじゃない。マイがどんな風に紹介されるのか、とっても楽しみだわ」

「…………お母さんだって、あとで聞くことになるんだよ?」

「ええ、もちろんよ──ねっ、アナタ?」

 このときの俺は、ただひたすら首を縦に振るだけに従事した。
 それ以外の行動は認められていない……無言の圧が、そう俺に強要する。

≪え、えー、それでは間もなく試合開始となります。スタートはカウントダウン式、10から数えて0になったと同時に始まります。会場の皆さんは、モニターを見ながら拍子を合わせてください≫

 観客たちで数字を読む中、舞台上のショウと[ドラグキャリー]もまた自身の武器を構えて相手に向かい合う。

 そして、カウントが0になった瞬間──お互いめがけて攻撃を行うのだった。


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