虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント準備 その02



 風兎に聞いてみたが、やはりルリを止めるのは難しいかもしれない。
 はっきり言ってしまえば、ショウやマイであればやり方次第でどうにかできるからな。

 だが、ルリは違う。
 子供たち──ほぼ主人公レベルの補正を受けている彼らであろうと、捻じ伏せることができる超越種や災凶種でも敵わない。

 それはあくまで風兎の見解ではあるが、当の昔に同じ答えを『SEBAS』が算出している……その答えは、今なお変わることの無い不動を貫いていた。

「闘技場の準備は最初からできているし……とりあえず、全自動ポップコーンメーカーでも作るか」

 アイスプルにおいて、住民たちが切磋琢磨する場所は闘技領域内部に限られている。
 昔と違い、蘇生薬でも復活できない誓約を持つ彼らのために用意された空間だ。

 家族を招く前日には、そこを封鎖して闘技場を設置する予定となっている。
 ……ギリギリまで解放してあるのは、そうしないと住民たちから抗議を受けるからだ。

 彼らも巻き込んだバトルイベントは、必ずショウの経験になると思った。
 しかし、マイとルリも参加すると宣言したからな……さてさて、どうしたことやら。

「よし、ポップコーンメーカー完成っと。風兎、食べてみるか? いちおう、人参味も用意してあるが」

『……頂こう』

 入れた素材に合わせ、味が変わるという仕様にしておいて良かった。
 人参味なポップコーン──『炸裂蜀黍』を美味しそうに食べる風兎に思わずほっこり。

「さて、数合わせに関してはポップコーンを食べた風兎に任せるとして……」

『おい……まさか、そういうことか!?』

「それもあったな。うん、食べたからちゃんと頼むぞ。それでだ、今のところ何か問題は起きていないか?」

『……ハァ。そうだな、枠が少なくて競争率が高いということぐらいだろうか。総当たりで、勝率の高い者から選ぶというルールを自分たちで設けて、激しい闘争を繰り広げているのが現状だ』

 うん、それっていつものことじゃん。
 いつもと違うのは、参加枠を争うという建前があるぐらい……それも戦いを楽しむための、ちょっとした隠し味にしているだけだ。

「なら、問題ないな。俺はしばらく、冒険世界の方に行く。前回みたいに、居なくなる間のフォローを頼まないといけないからな」

『あまり影響が無いようにするのだぞ』

「了解了解。まあ、アイツなら大半のことは片手間で済ませてくれるから大丈夫だろう」

 とりあえず、交渉材料を用意してある。
 ちゃんと持っていることを確認した後、俺は冒険世界へ向かうのだった。


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