虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その08



 機械の翼で飛んだ俺を見て、虎型の願望機は猛虎モードなる状態へ移行した。
 全身から駆動音が鳴り響き、それがまるで唸り声のように聞こえてきている。

「まあ、まだ一回もまともな戦闘はしてないし、ここからが本番ってことか……行くぞ、メカドラ!」

『ギャウ!』

「──『アルティマサバイブ』!」

『ギャウ、ギャウ、ギャウゥゥゥゥ!』

 …………ここまで来れば、もうオチが大抵の者には分かってしまうかもしれない。
 ヒントを一つ付け加えておくなら、今のメカドラは生体武具として俺と同化している。

 要するに、俺が発動するスキルや[称号]の効果対象に含めることが可能なのだ。
 同時に、俺が死ねばメカドラも……なんてことはないので、普通に復活するぞ。

 うん、願望機を相手にまともに戦闘はしていないというのはそういうことだ。
 ここからが本番……というのは、虎型だけの話だし。

 先ほど叫んだ『アルティマサバイブ』、その意味を虎型の願望機は計りかねている。
 当然だ、『プログレス』というシステムは彼らが稼働していた時期に存在していない。

 だが、メカドラのプログラムの一部を流用したそれは、ごく僅かではあるが願望機としてのシステムも踏襲しているわけで……だからこそ、向こうも完全に無視などできない。

 俺の手の甲には、『プログレス』をインストールするための宝石が取り付けてある。
 わざとらしくそれを発光させれば──虎型の願望機もそれに気づく。

≪新たな願望機と思わしき反応を確認。未登録の反応です、エネルギーの内包量を測定します……劣化版と推定≫

≪広域探知を起動──無数の劣化版が確認されました。Typeドラゴン、およびその使用者を処理後、攻撃対象に指定します≫

 どうやら『プログレス』は願望機の目から見ても劣化版とはいえ、ちゃんと願望機としての性質を有しているようだ。

 だが、問題はその後。
 メカドラと俺はイイとして、まさかの広域探知で『プログレス』保有者全員を殺そうと考えているらしい。

 それを止めるためにも、早急に俺は虎型の願望機を停止させなければならなくなった。
 爪や牙、咆哮で俺を止めようとする願望機のすべてを無視して、真っすぐに近づく。

「仕方ない、サクッと済ませるぞ」

≪Typeドラゴンの使用者が接近中。蓄積ダメージを測定……皆無。アルゴリズムを変更、対応レベルの引き上げを実行します≫

「さて、今回は場所をちゃんと把握しているからな……心臓部分っと」

≪停止コマンドが、てい、て……て──≫

 なお、簡単に停めているように見えて、実は何百回も死んでのミッション達成だった。
 ……修理時間に比べて、異様に早く終わった初期起動。

 ここからまた、再び起動するための準備に時間が掛かるんだよな。


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