虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索イベント その18
チュートリアルの部屋にて、テレビまで持ち込んでの引き籠もり。
現在は外部で繰り広げられている、エクリの戦闘を観戦していた。
『──『魔道錬産・火炎』』
魔道具の回路を描くことで、その場にその効果だけを発現させる錬産術。
描かれた回路によって、炎が生み出されて休人たちを燃やしていく。
が、一般的な魔法に比べてやはり性能では劣ってしまっている。
本来の使用者は、『プログレス』と組み合わせて強化していたが……。
『──『魔道錬産・黒雷』』
色の名が与えられた雷は、本来の性能に加えてその色の属性が与えられている。
それは闇属性──エクリの核となった、ユニーク種の属性でもあった。
「闇属性なら素体の効果で強くなるし、相手には“闇点発露”で弱点としてダメージを判定させられる。うん、そういう組み合わせもできるんだな」
俺だったら、普通に“千変宝珠”に闇属性でも付けて攻撃していたかもしれない。
もしくは魔力で身体強化をし、そこに闇属性を付与しての肉弾戦……とかな。
休人側もただ雷に追われるだけでは勝てないと察したか、近接戦闘に持ち込む。
……あっ、と思ったが時すでに遅し、力強く踏み込んだエクリが動く。
『──『地裂脚』』
俺が戦い、『SEBAS』が収集した膨大な量の戦闘データを搭載しているエクリ。
ハイスペックなエクリは、俺と違い自前で仙丹を保有している。
それによって、『闘仙』の仙術(物理)をあっさりと再現した。
以降もエクリは魔法も魔術も使わず、純粋な身体能力だけで休人を凌駕している。
スキルの補正が無くとも、相手の攻撃を受けず拳を当てて一方的に嬲れば、やがてどれだけ強い相手も倒すことができるのだ。
エクリが自身の『プログレス』を経由して用いている『スタンドアローン』は、単独行動時の即死を防いでくれる。
要は不意打ちさえどうにかすれば、最終的に勝てるという戦術。
……あまりにも暴力的、しかしこれを観た俺の感想は一言。
「──うん、計画通りだ」
もっとスマートに倒せることは、最初の方に“万闇統一”で示している。
それでもこうして、ありとあらゆる状況に対応していることを誇示していた。
それはどこかで観ている連中、そして何よりジンリへのメッセージ。
どうせ彼のことなので、俺と繋がっているという点は見抜いているだろうし。
さすがに俺が生み出した、という辺りまで難しいと思うが。
それでも俺を本気で狙えば、エクリが護衛として出てくることは理解するはず。
──彼に直接・間接問わず、雇われた者には悪いが、大人しく贄となってもらおうか。
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