虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

神様談(22)



 天上世界へと降り注いでいた光の先、そこは神々の住まう領域だった。
 連れてこられた脱獄神、そして精霊神の前には──ニコリと笑う子供が。

「まーったく、面倒を掛けさせたものだよ」

「何がまーったく、じゃ。見た目相応に空な頭をいちいち示さんでもよかろうに」

「……何がいいたいのかな、見た目も中身も若作りしているお婆ちゃん?」

「ほほぅ、言ってくれるではないか。だいたいお主はな、いつもいつも──」

 いつも以上に賑やかになる神域。
 その光景に◆◆◆◆は……ただただ、深い溜め息を吐く。

「──お前たち、もういい加減にしろ」

 そんな光景を打ち止めにするのは、いつも老人姿の神──死神だった。
 二柱、そして気絶したままだった脱獄神を叩き、場を鎮静化する。

「痛ッ! ……急に酷いじゃないか!」
「そうじゃそうじゃ! だいたいなんじゃ、われの言葉は正当な……痛ッ!」

「それはたしかにそうだ。だが、こんなのでも創造神なのだ。お前はそれを敬わなければならない」

「ふっふーん、その通り……って、あれ? 今、こんなのって言わなかった? ねぇ、僕の顔を見てちゃんと言って?」

「──こんなのでも、創造神だからな」

 本当に言った!? と創造神に、そろそろツッコミハリセンを入れようか……と悩む◆◆◆◆だが、このタイミングで脱獄神が目覚める。

「うっ……ここは?」

「やあ、どうやら目が覚めたみたいだね。気分はどうだい?」

「お、お前……いえ、貴方様は!」

「うんうん、本来僕は崇め奉られるべき存在だからね。これぐらいは当然だよ……まあでも、どうやら君はそうじゃないみたいだね」

 瞬間、神域一帯に強烈な圧が掛かった。
 誰も声を上げられない、ただ下を向き少しでも早くこの時間が終わればいいと思う。

 それだけの力があった・・・からこそ、創造神は創造神であり主神足り得た。
 ──そして、失われたソレらの力は、一人の休人によって取り戻されつつある。

「さて、君への沙汰を下そう──とりあえず君は『天獄』へ行ってもらうよ。なぁに、脱獄神の君だ、いつかはちゃんと出られるよ」

「なっ……!?」

「そんなに驚くことじゃないだろう? 悪いことをした神は、どこの神話に所属していてもしていなくても、『天獄』に行くなんて当たり前の常識だろう? もう話は付けてあるから、それじゃあ──行ってらっしゃい」

「い、いやだぁ──」

 最後まで言い切ることなく、脱獄神は足元に開いた穴の中へ吸い込まれていった。
 その先こそが『天獄』、己の意思で出たものなど一人として存在しない領域だ。

「さてさて、今回はツクル君にも迷惑を掛けちゃったね。その分、戦乙女ちゃんを手に入れていたけど……そうだ◆◆◆◆、せっかくだから彼女にアレをしたらどうだい?」

「……よろしいのですか?」

「かねてからの希望だったし、向こうの主神はそういうことには融通が利くからね。彼女がOKって言うなら、いいと思うよ」

 そう言われ、◆◆◆◆は悩み……決める。
 そして、目を閉じて──とある戦乙女へ神託を下すのだった。


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