虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

異神話対戦 その02



 神様同士の会談について、俺やエインヘリヤル、そして戦乙女が知る由は無い。
 入ることの許されない特別な部屋へ向かった神々とは別に、俺たちも移動を開始する。

 当然、辿り着いたのは闘技場。
 どうやらそれぞれ代表者を募り、まずはお互いの実力を確かめる……という流れになっているんだとか。

「ちなみに、どっちが強いんだ?」

「あっ、その質問は」

「──あっ」

 いつの間にやら、離れた場所に居たはずの俺とアインヒルドを囲う各神話の戦士たち。
 うん、それを決めるために戦っているのに口出しされればそうなるのか。

「────、──────」

「……あー」

「もしや、言葉が分からないのですか?」

「……いや、すぐに分かる」

 会話はある程度録音していたので、それらから言語を解析してくれているはず。
 しばらくすると、だんだんと鮮明に単語が分かる部分が増えていく。

「──おい、聞いているのか?」

《言語解析完了──『ギリシア神語(仮)』として登録します》

「……ああ、悪い悪い。で、えっと……ああそうだ、俺はあくまでも生身だぞ。自分でここに来て、今回はルーン文字を学びに来た」

 過去の発言も[ログ]を遡れば、しっかりと解析した言語で分かるようになっている。
 それによると、どうやら俺の気配がエインヘリヤルと違うことに気づいたらしい。

「やっぱりそうか。ならお前、もしかして強いのか?」

「当ったり前だヘーロース・・・・・の! 聞いて驚けよ、コイツはなんとあのヨルムンガンド様やフェンリル様だって倒してるんだからな!」

「! ……そいつは驚きだな。ヘラクレス様にも負けず劣らずの、なかなかの英雄っぷりじゃないか」

 俺の功績(?)を、勝手にしたり顔を浮かべたエインヘリヤルが語る。
 すると、ヘーロースと呼ばれたギリシアの戦士の顔つきが禍々しく……。

「なあ、俺とヤらないか?」

「う……こほんっ、それは何故?」

「おいおい、お前も男なら分かるだろ? 知り合ったんだ、まずは挨拶しねぇと」

「そういうものか? ……ああいや、そういうものだったなここは」

 そしてその『挨拶』は、ただ言葉を交わすだけでも一人にするだけでも終わらない。
 周りの連中、誰も彼もが俺に向けてギラギラとした目を向けていやがる。

「……よろしいのですか?」

「うん? まあ、よくは無いんだが……これは逃げようとしても逃げられないだろ」

「本気を出せば、逃げられるでしょうに」

「それはそれで、向こうの機嫌を損ねるかもしれないしな。まあ、データは多い方が俺としても都合がいいんだ。交流ってのは、情報交換の機会でもあるからな」

 何より、俺には『バトルラーニング』やサポートがあるからな。
 ギリシア神話の恩恵が、どういったものなのかを調べさせてもらおう。


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