虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

WITH仙王 その14



 現れた強力な個体──『血染獅子』を相手にすべく、向かうのは人形のエクリ。
 いかにもなフラグを立てようとしていたのだが、それは防いでおきました。

 移動方法は簡単、俺同様に転移を強引に発動するというもの。
 案ずることなかれ、彼女はその体の特性から体の心配はしなくていい。

《──転移成功です》

「了解、じゃあ人形と映像を繋いでくれ」

《畏まりました》

 座標代わりにしたので、そこに人形が派遣されていることは分かっている。
 戦闘する当人よりかは、後方に配置した人形から戦況を窺った方が見やすいはずだ。

「っと、もう始まってる……うん、『バトルラーニング』のプログラムを擬似スキルとして入れておいたのは、やっぱり正解だったみたいだな」

《『プログレス』の方は『ゴーストボディ』ですね。霊体化を瞬時に切り分けることで、攻撃の無効化を図っているようです》

「人にはなかなかできないことだな。エクリだからこそ、できる荒業ってところか」

 彼女の『プログレス』はかなり特殊で、擬似的にあらゆる『プログレス』が使える。
 今回もまた、そうした能力を利用することで『ゴーストボディ』を用いているわけだ。

「ヒット&アウェイ、初歩的ではあるが堅実的だな。死亡フラグっぽいことを言っていた割には、こつこつ削るんだな」

《失敗する姿を見せることを、望んでいないからでしょう。何より、これは時間稼ぎ。より確実に戦力低下だけを見込して、あのように戦っているのです》

「うおっ、血を引き剥がした!? そんなことできるんだな……」

《エクリの能力の一つ、強制的な闇属性に対する弱点付与の効果でしょう。それによって血へと干渉し、自身の変換対象として飛ばした闇ごと取り込んだのです》

 エクリの基となったのは、『黒淵穴亡[エクリエンド]』というユニーク種の闇精霊。
 かつて相対した[スノウエスト]という精霊型のユニーク種を参考に──創られた・・・・

 そういう研究を『SEBAS』はしているし、俺もそれは認めている。
 厄介だった敵の力を参照し、それを利用するために生みだされたのだ。

 そんなわけで、[エクリエンド]の素材を使って創られたエクリは、[スノウエスト]の雪を介した置換能力……その闇属性版が備わっている。

 あらゆる『プログレス』を使う力、そして闇属性を介した生存や他者への弱点付与。
 何より、俺と『SEBAS』の技術のすべてが籠められた擬似スキルなど……。

 さまざまな力を操ることができる人形。
 それこそが『終従人形エクリエン・ドール』の正体である。


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