虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
物ノ怪本家 その08
クレーターの中で行われる一対一。
百鬼夜行衆、そしてコミの母である朱音はただそれを見ているだけ。
相対する巨鬼は父の侵羅童子。
現状、有り余る膨大な量の妖気を物理強化に変換して俺の小細工を破壊している。
再び“千変宝珠”で生み出した武器が、ただの拳撃によって破壊された。
それ自体は、すぐに魔力を補填することで修復するが……衝撃が体を襲っている。
「くっ……この野郎」
「痛みとはお互いに分かち合うもの。さぁ、共に感じ合いましょうか」
「っ、気持ち悪ぃな!」
俺の生命力は1、現在“神持祈祷”によって発動する『ダメージイーブン』の効果で、受けたダメージのきっかり半分が侵羅童子にカウンターで届くようになっていた。
いちおう体を『メタルスライム』で流動的にしているが、衝撃だけは響いてくる。
俺は生命力は減らないし、向こうも自前の再生力が働く……戦闘は今なお続いていた。
「仕方ありませんね……そろそろ、使うとしましょうか」
「何をするつもり──っ!?」
《『鬼族の天敵』、『鬼帝殺し』をセット》
「貴方だからこそ、ですね。さぁ、もっと刺激的な戦いをしましょうか!」
固定ダメージの『貧弱な武力』、そして防御無視の『闘天』。
俺自身が受ける攻撃も『メタルスライム』が緩和し、『ダメージイーブン』で反撃。
これまでは文字通りイーブンだったダメージも、二つの[称号]による弱体化と特攻効果によって大きく変化する。
これまで以上に火力……が出るわけでは無いが、届くダメージが増えていく。
俺の戦い方も、チクチクと連撃を与えていくスタイルに変わってことでその量は増大。
ここでカッコイイ主人公ならば、熱い台詞で説得などもあったかもしれない。
……がすでに子持ちの身、少年みたいに燃える展開は息子に任せておこう。
「私は別に勝利など要らないのです。ただ、孤魅童子様を逃がすことさえできれば。なのに貴方は未だに、私を殺し切ることもできていない……はてさて、私はいつまでここに居れば良いのやら」
「…………」
「当然、貴方がもう一段も二段も力を解放する術を有していることは分かります。それでも、私は生き残りますよ──いい加減、子離れされたらいかがですか?」
「────ッ!!」
凄まじい妖気がさらに溢れ、侵羅童子を中心に亀裂が生まれていく。
このままだと、この場所自体が危ういかもな……そう思っていると──
「いい加減にしなさい」
「────」
空から降り注ぐ大量の水。
文字通り、それは侵羅童子の頭を冷やすように生み出されるのだった。
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