虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

怪ノ物騒動 その04



 そして、数日が経過した。
 隠れ里の空気もさらに張り詰め、ピークに達している。

 そう、すでにその姿が見えつつある怪ノ物こと西洋妖怪衆。
 俺は知りもしなかった、里の周りに張られている結界の外側からの侵入。

「これは……本家の百鬼夜行も顔負けだな」

「…………本家・・の百鬼夜行は、もっと凄い」

「おっと、マジの百鬼夜行があったな。それよりどうだ、俺の揃えた道具は」

「ああ、注文通りだ」

 それに対して、俺はコミに頼まれていくつかのアイテムを用意した。
 そのうちの一つは、外部からの侵入を里の者たちでもできるようにするための物。

 大量に複製した魔法のスクロールを、里の者たちに渡してある。
 攻撃魔法というより、妨害魔法がメインである……戦闘は得意な者に任せればいい。

「ポーションの方もかなり揃えてある。結界の外側でも、充分に戦えるだろう」

「ああ、感謝する──行くぞ、この地を自分たちの手で守り抜くぞ!」

『おぉおおおお!』 

 準備は整った。
 このタイミングで怪ノ物側から、使者らしき人物が前へ出てくる。

 そして、こちらからはコミが。
 結界を隔ててではあるが、両者は互いの主張を伝える。

「──ミス・コミドウジ。最後にもう一度、こちらの主張を告げよう。降伏し、この地を我らに提供していただきたい。君たちは物ノ怪たちに迫害され、追放されたのだろう? 我らの同朋に加えてあげようじゃないか」

「お断りじゃ。そのような主張をするのであれば、まず物騒なものを下げてもらいたい。それに、私たちは迫害されたわけじゃない。道は違えど物ノ怪の誇り、失ったわけではないのじゃ」

「……オー、なんたる悲劇。ならば、仕方あるまい。後悔は、しないでもらいたい」

「それはこちらとて同じこと。できるのであれば、傷つけたくない。後悔をする前に、降伏することを勧めるぞ」

 互いに煽る、そりゃあもう煽る。
 その結果がどうなるのかは自明の理、両者は共に手を挙げて──振り下ろす。

「「始めろ(よ)!」」

『────ッ!!』

 湧き上がる怒声。
 それと同時に放たれる遠距離攻撃、そしてそれらを防ぐ防御。

 物ノ怪たちの戦闘部隊は結界の外へ向かい直接攻撃を始め、それに応じるように肉弾戦に長けた怪ノ物たちがぶつかっていく。

「──『インストール:ベストペスト』」

 そんな中、俺は『プログレス』の管理者権限を用いてある能力を獲得する。
 使いようによっては、この場のすべてを絶滅させ得るであろう最悪の能力。

 だがそれは使い方次第。
 今必要なのは、無力化する術──故に待とう、その刻が訪れるのを。


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