虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
防衛策結果 後篇
古代人がどのような主張をしようと、休人が聞く耳を持たねば意味が無い。
言葉を交わせるはずなのに、戦争が絶えない地球からもそれはよく分かることだろう。
つまり、相手に言葉を交わす意味を見出していなければならない。
無知だから利用する、魔物だから殺す……そんな暴論染みた理屈が通ってしまうから。
「──ある程度向こうで生活して、情が湧いたってのもある。もちろん、懸念をする意味なんて無い可能性もある。でもまあ、やるだけやって失敗しても、笑って許してくれる連中だからな」
「はいはい、分かりましたよ。それで、有益な対価はあるんだよな?」
「金はもう払ってあるし、地図だって提供したんだが……。じゃあそうだな、これとこれでも見比べてくれ」
渡したのは二つの素材。
どちらも同じ物……だが、その品質がまったく異なっている。
魔物由来の素材で、通常ならば倒して得るのが当たり前。
だが、それが一体あたりから一つしか得られないモノであれば?
狩る数は増えるが、その分魔物が勝手に供給されるわけじゃない。
……いやまあリポップするけど、高品質の素材はドロップしないだろう。
「……で、わざわざ見せたってことはあれだろう? 蜘蛛の森みたいに、対価と引き換えに交換するんだろう?」
「あっ、分かるか? 場所によっては、戦闘するだけで貰えるところもあるぞ。古代人の所なら、それらを一括して取引できる……ただし、魔物の所ならもっと格安にってのが売りな部分だ」
「益があるから生かしとけ、ってことか。もし手を出されたら取引中止って言えば、それまで益を得ていた連中も庇うようになるか」
「そういうことだ。敵の敵は味方、みたいなノリで止められたくなければ協力しろ。敵だと思う奴が敵だって認識を植え付ければ、ある程度強硬派は居なくなるはず」
強硬派、EHOにおける行動をゲームとして認識する者たちの中でも、特に殺戮を好むPK的思考を持つ連中の総称。
俺が最初から心配している、原人たちへの手出しも彼らが成すことだ。
まあ、それは極少数だが……非人型の住民だと、普通に他の奴らも狙うんだよな。
そちらに関してはそれでも、ある程度説明すれば納得するはず。
だが強硬派は、やりたいから殺る、ぐらいのノリなのでどうしようもないのである。
「絶対に防ぐことなんてできないんだから、自主的に守りたいと思わせないとな。これが上手くいけばいいんだがな」
「経過報告は随時届けてやる。まあ、気兼ねなく自由に遊ぶこった」
「悪いな、毎度」
「……いいよ、俺も好きでやってんだから」
なんだかんだ言いつつ、タクマは情報屋としての仕事が全うできるなら大抵のことはやり遂げてくれる。
だからこそ、俺やジンリですらタクマを頼るんだよな。
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