虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その26



 ポイントの交換はロビーで行われる。
 すべての試合が終了し、賭けの配分なども済んだのだろう。

 多くの人々が集まって、我先にと受付へ向かっている。
 ……人の圧に負けて、どれだけの数死ぬか分からんな。

「『SEBAS』、どうしようか」

《旦那様はVIP待遇を受け、個室での確認が可能です。逆に、ロビーで行う場合は目を付けられる可能性が高いかと》

「……そうか。なら、個室に行こうか」

《畏まりました。個室予約の連絡は、こちらで済ませておきます。五分後には、確保が可能かと》

 五分ぐらいであれば、時間潰しをしていればすぐに経過する。
 アイテムの整理などをして待った後、用意された個室へ向かう。

《ご不要でしたので、説明役の派遣は止めさせていただきました。確認と発注は、そちらの端末から可能です》

「了解」

 前は『SEBAS』が情報を纏めて表示してくれたが、今回は正規品での確認だ。
 あのときに確認したときより多くのポイントで、交換できる景品を調べていく。

「──【賭闘士】、【暴魔士】、【博徒】、【闘資家】……ギャンブル系職業って感じのヤツが多いな」

《【賭闘士】は掛け金が多いほど強化され、【暴魔士】は一定確率で魔力が暴走する代わりに強化されます。【博徒】は運の操作能力が備わっており、【闘資家】は金額を出した分だけ掛けた相手の成功率が上がります》

「なかなか面白い職業だな……まあ、ポイントは充分にあるから全部交換っと。この後はどうなるんだ?」

《転送システムを通じて──このように、用意されます》

 すぐに【救星者】の“職業系統樹”を介して、目の前に現れた職業結晶を使用する。
 新たに職業ツリーに派生が生まれ、経験値さえ注げば就くことができるようになった。

「昔と違って、今は【試験職】で貯めた分の経験値があるからな……レベルのカンストだけなら、割とすぐにできるかもな」

 成長しない【試験職】だが、その実得られる経験値はあらゆる職業に通じている。
 すでにカンスト済みなので、得た経験値を異なる職業に注ぐことも可能だ。

「どうだ、足りるか?」

《一次派生職として設定されていた【博徒】のみ、レベルのカンストが可能です》

「そうか……よし、やっちゃえ」

《畏まりました──経験値の割り振りを開始します》

 見る見る内に、【博徒】のレベルは上がっていく。
 やがてその数値は30、カンストしたところで停止する。

「職業は対応する行動でも経験値が稼げるからな……よし、そのうち賭博に行こうか」

《旦那様の仰せの通りに》

 もう大会は終わっちゃったからな。
 どうせなら、速めに就職しておいた方が良かったかもしれないよ。


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