虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その13



 舞い踊ると同時に、発生した魔法は……特に目立った演出を起こさなかった。
 代わりに膝を着く舞台上の者たち、何が起きたのかと多くの者たちがどよめく。

《──重力魔法ですね。魔法抵抗を舞によって落としたうえで、物理的に動きを抑えたということでしょう。自身は舞うという行為そのものでバフが掛かっていると思われます》

「なるほどな、ついでに聞いておきたいんだがバフの効果は何なんだ?」

《身体強化系です。重力魔法は彼女自身にも影響を及ぼしているので、それに耐えられるだけの肉体を確保しております》

「つまりアレか……それを超えるレベルで動ければ、なんとかなると」

 俺がそう呟くとほぼ同時、地を這っていた者たちが起き上がる。
 ショウは『ブレイブソウル』、魔法使いは強化魔法、機人族は機械の力だろうか。

 踊り子は封じようと新たに舞を始めるが、そうはさせまいと動く魔法使いと機人種。
 火の玉を飛ばして強制的に動きを中断させると、逃げた先に飛んでいくマシンガン。

 踊り子も踊り子で、魔道具や使い捨てのアイテムで結界を張って対策はしていたみたいで、どうにかそれを凌いでいく。

 ──だが、次に振るわれた一閃、それはありとあらゆる防御を切り裂いた。

 ショウがその場で剣を鞘から抜くと、星のエネルギーを帯びた斬撃が放たれる。
 武技でも何でもない、剣の能力とショウ自身の技量で斬撃は飛び──踊り子を裂く。

「我が息子ながら、なんともまあハイスペックなことを……」

《さすがは坊ちゃんです》

「まあ、そうだな。あの場には三人、それぞれショウに優っている能力値があるだろうから、その分だけ強化されて一撃……ってところかな?」

《はい。付け加えますと、剣へ柔性を与え、鞭のように振るうことで、斬撃の速度を高めていたようです。[フライハット]を上手く使いこなしている証拠かと》

 俺の打ち上げた『星鉱剣』なのだが、たしかにそんな効果があったな。
 ショウが使い続け、いつの間にか強化されていたし、すっかり忘れていた。

 メンテナンス要らずだから俺が見ることも無かったし……そうか、初期からある能力をちゃんと使ってくれたのか。

 踊り子が居なくなり、デバフが解除されたことで動き始める三人。
 まだ重力魔法の効果は持続しているので、それをどう活かすのかがカギとなる。

 魔法使いは魔法陣に近づこうとするが、それを阻む機人族とショウ。
 うん、行ったら術式を弄って利用するからな……それが正解だ。

 とはいえ、警戒ばかりしても詠唱やら発動の時間を稼ぐだけ。
 早急に決断しなければ、最悪の結果が訪れるだろう。


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