虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル後篇 その06



 擬似的な魔法を使い、こちらを攻めてくる赤色の機械兵たち。
 ただしその数は使用者の魔力に依存し、刻一刻と尽き始めつつある。

 迎え撃つは星のエネルギーを秘めた獣、そして無尽蔵の土塊から生まれた人形たち。
 心臓の脈動が止まらない限り、その製造は決して終わらない。

「さぁ、まだ続けますか?」

「くっ……」

「私は戦わずとも勝てます。貴方が勝つためにやれることは、たった一度のチャンスに賭けること……ぐらいでしょうか」

「……そして蘇る、だろう? その程度の煽りに乗るようでは、これまでも乗り越えられなかったぞ」

 そう言って、また赤色のポーションを取りだすアカ。
 おそらく、先ほどとはまた異なる代物……だって色が赤褐色なんだもん。

「気になるか? このポーションは『ブレイクポーション』だ。その効果は……見てからのお楽しみだ」

「嫌な予感しかしませんね」

「……そう言いつつ、何も手を出してこないのは余裕の証拠か。いいだろう、これで終わりにしてやる!」

 グイッと飲み干されたポーションは、瞬時にその効果を発揮する。
 一本目を飲んだ時から出ていたオーラが、突如数十倍に膨れ上がったのだ。

 当然、その分だけ赤色の割合が増え、補正率が向上する。
 そして、何をするのかと思えば──自ら動き、獣とゴーレムを屠りだした。

「展開──“複合錬金・熱血”」

 体から溢れるオーラが、俺の防衛陣に触れた途端に発火する。
 言った技名が正しいなら、血が熱を帯びた結果なのだろう。

 当然、俺も触られたら発火するだろうし、その場合はいずれ心臓を焼き焦がされて……最終的には死ぬ可能性が高い。

 そうならないためには、他の方法で勝つのが最適解だ。
 指定したアイテムの破壊がそれに該当するのだが……うん、数が多すぎて不可能。

 となると、結局正攻法に倒すことが最短での攻略になるわけで。
 展開中の“精辰星意”は、オーラで相殺されてまだ時間が掛かる……仕方ないか。

「──“神持祈祷・サウザンドエッジ”」

《“職業系統樹”を起動──最適職業へ就職します。[称号]設定を変更──変更完了》

「“セットウェポン”、“神持祈祷:デッドタナトス”。“神持祈祷:オールコントローラー”」

《同期開始──成功しました。》

 次々と切り替え、『プログレス』の力を女神から借り受ける。
 千本の刃はすべてが死神の鎌となり、自在に宙を舞っていく。

「──触れたら発火、触れたら即死。さて、勝つのはどちらでしょうか?」

「……躱せないと思うか?」

「私にはバトルラーニングがありますので。最後に勝つのは私ですよ」

「いいや、私だ──“複合錬金・魔剣”」

 あとは野となれ山となれ。
 追いかけるように再び大量の魔剣を生み出したアカと、接近戦を仕掛けながら戦う。

 ──たった一度のチャンスを潜め、その瞬間を待ちながら。


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