虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その25
連続更新です(02/06)
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三回戦を終え、次は四回戦だと意気込んでいた俺に、一通の[メール]が届いた。
「……翌日への繰り越し、ねぇ。しかも、代わりにやってもらいたいことがあると」
《私としては、旦那様にも利がある話だと思いましたが……いかがでしょうか?》
それは午後の部最後に行われる予定だった決勝戦を潰し、空いた時間でのパフォーマンスのような物だった。
ただしそれは、バトル系ではなくクラフト系……つまり生産活動でのもの。
敗者も混ざり、観客たちを楽しませてほしいという依頼である。
「うーん、まあいいんだけど。しかし、やるにしても何で参加すればいいんだか」
《どの生産技術を用いるのかは、参加者に委ねられております。旦那様がお好きな分野でも、あくまでその場に足りない分野でも構わないでしょう》
「そういう考えもあるか……俺の場合、どの生産技術が使えるのかと裏を掻くためにも使えそうなんだよな」
そりゃあ特化した人はその分野しかできないだろうが、俺は:DIY:スキルの恩恵でどんな生産でも行うことができる。
これまでに見せたのは鍛冶、錬金、裁縫などだが……実際に使ったのは、他にもいろんな技術である。
使える技術を知れば知るほど、他はできないだろうと思い込む。
……実際、俺という例外を除いて、普通は全部というのは不可能に近いしな。
◆ □ ◆ □ ◆
百人の参加者の内、半数である五十人。
舞台やその近くで屋台を開き、主催者側に提供された素材でアイテムを加工する。
なお、舞台に上がっているのはごく僅かで四隅に準決勝まで残った者が待機していた。
つまり、俺と『学者』、そして俺の対戦相手とその敗者が作業をしている。
「──どっちも休人だよな……アレ。休人の中にも、だいぶ強い人が来ているわけだ」
休人の利点は死んでも確実にやり直せること、そして[メニュー]派生のシステムだ。
擬似的に『プログレス』がそれを再現している今だが、まだできないことも多い。
能力値の手動割り振り、スキルポイントやそれに伴うスキル習得など……一番の違いはやはり、あらゆる事柄への適性である。
原人では才能という問題で到達できない領域でも、休人であればとりあえず達人と呼ばれる域までは到達できてしまう。
それ以上は休人でも、ほんの一握りしか無理なのだが……到達してしまえば、他の利点と相まってさらに強力な力となる。
「まっ、だからこそ最上位職業の自由民たちにも、この部門であれば勝てたわけだ。世の中、何があるか分からないな」
ちなみに、舞台上で並んでいる数は彼らの方が多い。
そういう部門だからであり、俺と『学者』がさして需要の無い部門だからでもある。
まあ、『学者』の方には魔本や魔法のトークをしたい者が集まっているが……俺の方にはそれすらない。
「『何でも屋(他ができない分野限定)』、なんてやったのが不味かったかな?」
どうやら他の人々が優秀だったようで……それとも、他の理由があるのかな?
そんなわけで、俺は独り言を呟いても気にされない程度に暇なのであった。
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三回戦を終え、次は四回戦だと意気込んでいた俺に、一通の[メール]が届いた。
「……翌日への繰り越し、ねぇ。しかも、代わりにやってもらいたいことがあると」
《私としては、旦那様にも利がある話だと思いましたが……いかがでしょうか?》
それは午後の部最後に行われる予定だった決勝戦を潰し、空いた時間でのパフォーマンスのような物だった。
ただしそれは、バトル系ではなくクラフト系……つまり生産活動でのもの。
敗者も混ざり、観客たちを楽しませてほしいという依頼である。
「うーん、まあいいんだけど。しかし、やるにしても何で参加すればいいんだか」
《どの生産技術を用いるのかは、参加者に委ねられております。旦那様がお好きな分野でも、あくまでその場に足りない分野でも構わないでしょう》
「そういう考えもあるか……俺の場合、どの生産技術が使えるのかと裏を掻くためにも使えそうなんだよな」
そりゃあ特化した人はその分野しかできないだろうが、俺は:DIY:スキルの恩恵でどんな生産でも行うことができる。
これまでに見せたのは鍛冶、錬金、裁縫などだが……実際に使ったのは、他にもいろんな技術である。
使える技術を知れば知るほど、他はできないだろうと思い込む。
……実際、俺という例外を除いて、普通は全部というのは不可能に近いしな。
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百人の参加者の内、半数である五十人。
舞台やその近くで屋台を開き、主催者側に提供された素材でアイテムを加工する。
なお、舞台に上がっているのはごく僅かで四隅に準決勝まで残った者が待機していた。
つまり、俺と『学者』、そして俺の対戦相手とその敗者が作業をしている。
「──どっちも休人だよな……アレ。休人の中にも、だいぶ強い人が来ているわけだ」
休人の利点は死んでも確実にやり直せること、そして[メニュー]派生のシステムだ。
擬似的に『プログレス』がそれを再現している今だが、まだできないことも多い。
能力値の手動割り振り、スキルポイントやそれに伴うスキル習得など……一番の違いはやはり、あらゆる事柄への適性である。
原人では才能という問題で到達できない領域でも、休人であればとりあえず達人と呼ばれる域までは到達できてしまう。
それ以上は休人でも、ほんの一握りしか無理なのだが……到達してしまえば、他の利点と相まってさらに強力な力となる。
「まっ、だからこそ最上位職業の自由民たちにも、この部門であれば勝てたわけだ。世の中、何があるか分からないな」
ちなみに、舞台上で並んでいる数は彼らの方が多い。
そういう部門だからであり、俺と『学者』がさして需要の無い部門だからでもある。
まあ、『学者』の方には魔本や魔法のトークをしたい者が集まっているが……俺の方にはそれすらない。
「『何でも屋(他ができない分野限定)』、なんてやったのが不味かったかな?」
どうやら他の人々が優秀だったようで……それとも、他の理由があるのかな?
そんなわけで、俺は独り言を呟いても気にされない程度に暇なのであった。
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