虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その16



 死んでも死なない俺なので、体内にアイテムを埋め込むことも問題なかった。
 予選中に製作し、意図的にそのままであるよう細工までしてある。

 その効果によって、制限時間は有ってないようなものとなった。
 もちろん、壊せばいいのだが……試合中、指定したアイテムの強度は高まっている。

 相手は最強の武器を持ち、その他無尽蔵にサブウェポンを生み出せる『造槌』。
 心臓を宣言したことで、間違いなくためらいはなくなったはず──そこを狙う。

「──“極小火ミニマムファイア”」

「……!」

 杖から小さな火種を生み出すと、突如として火力が増大して『造槌』を襲った。
 対する『造槌』は、槌を振るう──地面が突如として隆起し、壁を生み出す。

「割れろ──“極小土ミニマムソイル”」

「……『■■きどう』」

 微量の土を杖から吐き出すと、今度は地面が真っ二つに引き裂かれる。
 すると『造槌』は腕輪を起動、取りだしたドローンを足場として確保。

「吹き抜けろ──“極小風ミニマムウィンド”」

「……!」

 息程度の微弱な風を吹かすと、それは台風レベルの暴風と化し『造槌』へ向けられた。
 ドローンを使って躱そうとするが、吸引力に呑み込まれていく。

 だが、巻き上げられた床を槌で叩き、武器生成後に即時射出。
 柄に掴まり強引に脱出を図ると、今度は裂け目に突っ込んでいく。

「……!」

「くっ、そう来ますか!?」

 地中というリソースの宝庫で、『造槌』はそれらを一気に変換する。
 するとどうなるか……土がすべて武器に置き換わり、その隙間は埋まらない。

 舞台は突如、地面を失い落下を始める。
 ドローンで足場を確保した『造槌』、ただ落ちて逝くだけの俺──どちらが有利かなどお察しだろう。

「それでも──“極小雷ミニマムサンダー”!」

「……」

 静電気程度の電圧は、轟雷と言っても過言ではないほどに強力に。
 だが、これは避雷針のような物をすぐに用意され、あっさりと逸らされる。

 そして、ドローンを複数用意し、俺の下へ跳ねるように飛んできた。
 魔法を無数に使うが、これまでに見せすぎたのだろう──眼前まで迫って来る。

「……終わりだ」

 間近に来たことで聞こえたその声は、まさに死神の囁きなのだろう。
 体を押すその衝撃は、心臓に刺し貫かれた剣によるもの。

「──いいえ、共に終わりましょう」

「っ……!?」

「──“微回復ミニヒール”」

 職業スキルではない、かつてスクロールで習得してあったこの魔法。
 これまでの流れで、思うだろう……回復で粘る物だと。

「なっ……」

「魔法名“虚無イネイン”。効果はお察しの通りですので」

「……すっかり、騙されちったな」

 目論見は通じたようで。
 スッキリした顔でそう告げる『造槌』と、ここではないどこかへと呑み込まれていくのだった。

「──“極小回復ミニマムヒール”」

 まあ、俺は空間魔法を使って逃げるけど。


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