虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その05



 たぶん、本戦用の装備だけでなく、前段階で作った設備も評価されたのだろう。
 あちらは:DIY:を使ったので、すべてが最上位品質としてS評価だったし。

 どういうやり方であれ、なんとなく目を付けられる気はしていた。
 だからこそ、異なる偽名を使って特殊生産部門に参加していたのだ。

「まあ、ともあれ突破だ。思ったよりも、基礎縛り部門よりも休人の数が減ってるが……これは仕方ない結果だな」

 休人にも優れた職人は居るが、やはりシステム由来の技術をモノにしている原人たちの方がまだまだ上。

 人間国宝級の技術があっても、それは地球由来のシステムに頼らないモノに過ぎない。
 生産システムに適合した者、あるいは双方の技術を昇華させられた者だけが残った。

「前回は使わなかった【試験職】、今回は使用した方がいいな」

 ありとあらゆるスキルや武技・魔技への適性を、微粒子程度に与えてくれる特殊職業。
 その副次効果で、俺の持つ多くのパクリ技術をシステム由来として誤認させられる。

 アイテム経由で発動していた物も、その効果の対象を【救星者】の“職業強化”の力で拡張することでどうにかなった。

 まあ、そちらの方は媒介となるアイテムが持ち込めないので、ほとんど意味が無いが。
 それでもごく一部、武技などは完璧になぞれば発動するので役に立つだろう。

「ふぅ……あとは本戦特有のルールを気にすればいいだけか。『SEBAS』、情報を教えてくれ」

《畏まりました──こちらとなります》

「なんて言ったって、特殊生産部門だしな。うん、やっぱりいろいろと載ってるし……」

 さて、そんな特殊生産部門だが、勝利方法は二つあるようだ。
 これは下級職と最上位職の補正の差を、どうにか覆すためのものだろう。

 一つは王道に、相手の生命力を枯渇寸前まで追い込むこと。
 闘技場に展開した結界によって、強制回収されたら負けとなる。

 そしてもう一つは、互いに宣言したアイテムを破壊された場合。
 破壊以外にも、何らかの形で消失した場合も負けとなる。

 指定したアイテムは、一時的にいくつかの補正を受けて普通より壊れづらくなるので、それを相手に壊されないように立ち回らなければならない。

 ただし、武器などを選んだ場合、攻撃力などにも補正が入るので、壊れる前に殺すという選択肢を取る者も現れるだろう。

「一つしか作ってない奴は、まあそれしか選べないんだが……複数作った奴は、それを隠し通すのも有りってわけだ」

 もちろん、それを探さないで本人をやっつけた方が速い場合もあるだろう。
 うん、特殊要素が加わったことで、なかなかに面白い闘いになったと言えるな。


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