虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル中篇 その03



 ──“神持祈祷:○○II”。

 何度も使っている内に、女神プログレスから受けられる恩恵が一段階向上した証。
 これにより、初期能力も一段階分強化された状態で使うことができる。

「他にもいくつかおまけがあるんだが……今は別にいいか」

 そんな安全空間の中で、:DIY:を発動しながらの生産真っ最中。
 複数の[称号]で補正を加えながら、最後の工程に今手を加えた。

「よしっ、設備が整った! これで補正付きの武器が作れるな」

 ルール上、用意された設備はどんなアイテムでも可能ならば加工することができる。
 その利便性の代わりに、設備そのものによる恩恵が受けられない。

 まあ、これは高級な設備由来の物なので、初心者には大して知られていないのだが。
 高い品質と優れた効果を付けるのならば、設備の方もこだわらなければならない。

 ──というわけで、作っちゃいました。

 ありとあらゆる鉱石の頂点、星の力を蓄えた鉱石や植物を使って設備を整えてある。
 さすがは:DIY:、超高難易度の加工も鼻歌交じりに同時作業で終わったよ。

「:DIY:はここで解除っと。ここからは【生産勇者】の出番だな」

《──“自産直装”を起動、これから生産されるアイテムに最適な強化を施します。同時に『巧天』によるアイテム強化を発動、全体的な強化を図ります》

「ここからはマニュアルでやらないとな。そして、これも使おうか──“鍛眼火治使キュクロスミス”」

 かつて誰かが、ユニークモンスターから手に入ったであろう鍛冶槌。
 そしてこれから発動するのは、その名前を冠した特殊なスキル。

 たった一つ持ち込むことができた自前のアイテム、これを選んだのには意味があった。
 片目を閉じ、鍛冶槌を視界に重ねるように構えると──その瞳に炎が灯る。

《発動中、旦那様の視界に映る火は理想の打点です。その部分に打つ限り、最高品質が約束されます。また、神鉄鉱であろうと楽々打つことが可能でしょう》

「:DIY:が無い間は、助かる能力だな。そうだなぁ……本当はもっと驚くような効果なんだろうけど、なんというか今さらだな」

 普段からやっていることを、今さら特別感付きでアピールされても困ってしまう。
 神鉄鉱を加工したからこその設備で、もうやっているというのに……。

「まあ、何はともあれ準備は万端だな。始めるとしようか!」

 それから時間制限目いっぱい、俺はひたすら生産に打ち込み続ける。
 そして、時間になったとき──俺の視界は元の会場に戻るのであった。


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