虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル中篇 その01
そして翌日、さっそく特殊生産部門が幕を開けた。
ネタ部門の中でもかなり複雑な仕様だからか、念入りな説明が行われる。
《──こちらが、それらのルールを纏めたものとなります》
「『SEBAS』が居てくれて助かったよ。さて、ルールだけど……:DIY:がしっかり使えるみたいだな」
基本的に、基礎縛り部門と違って何かができないというわけではない。
当初から予定されていた通り、その場でアイテムを作って戦うという感じだ。
問題はそのアイテムを作るための素材を、どうやって用意するのか。
その答えもまた、開始前の説明でしっかりと行われていた。
「……身包み全部剥いだうえで、採取用のエリアに飛ばすと。制限時間内で何を採ってどう使うのか、作る時間まで考えてやる。結構面白いなこれ」
参加者はトーナメントを勝ち抜く前に、あらゆるものが揃ったフィールドへ転移する。
そこで必要な素材を揃えて、己の生産系能力でアイテムを作るのだ。
ここで重要なのは、素材集めの時間も生産作業の時間も一緒くたなこと。
素材にこだわるのか、作るアイテムにこだわるのかを選ばなければならないのだ。
《参加者の評価は賛否両論ですね。制限時間はかなり多めに用意されていますが、やはり最高品質を求めるのであれば時間が足りないようですので》
「回避特化なら武器だけでいいが、重装備派なら全部を作らないといけない……そういう部分でも差があるのか」
《救済案として、最終的に用意したアイテムの数で試合中の能力値に補正が入るとのことです……が、旦那様の場合は──》
「ほぼゼロなんだから、補正に関しては諦めた方がいいな。まあ、俺は素材回収の時間をカットできる分、アイテム生産の方に力を入れればいいだけのことか」
ルール的に:DIY:の利用が可能である以上、魔物由来の素材以外は何でも望むだけで瞬時に用意できる。
なお、今回の場合魔物の素材はフィールド各地にある宝箱から手に入れられるらしい。
より奥地へ向かえば向かうほど、レア度の高い素材になる……時間が掛かるな。
「一番重要なのはアレか、生産用の道具。アレはどういうルールになっている?」
《こちらの情報を──持ち込みは一つ、残りは用意された物を使用することになります。あらゆる素材に対応可能な物ですので、加工不可という問題は起きません。ただし、道具による製作補正は発生しないとのこと》
「逆に、持ち込む道具ならあるわけだ。それも重要だし……一部のヤツは持っているはずだよな」
思い出すのは一振りの鍛冶槌。
条件による鍛冶補正が入っているので、持ち込みをすれば他の鍛冶職人よりも有利になるはずだ。
──ユニークアイテム、果たしてその使い手が何人参加しているのやら。
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