虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その29



「あの爺さんのことはもういいか。それよりも、今回の成果だな……どうなんだ?」

《アイテムなどはございません。名誉のみの[称号]とこの闘技場用のポイントが、各勝者には与えられます》

「これか、『第一回基礎縛り部門優勝』。まだ一度目だったんだな」

《無制限部門と初心者部門は、すでに何度も行われております。初回はそれら二つ、そして以降は今回のように色物な部門が用意されているようです》

 過去には裸装備(強制な布装備以外)だったり、一気にバトルロイヤル式だったりといろいろやったらしい。

 参加できない者も多かったようだが、必ず参加できる色物がいつか出ると運営が公表しているらしい……まあ、参加できるのとしたくなるかどうかは別らしいけども。

「ポイントは……うん、多いのか少ないのかよく分からないな」

《旦那様は今回の優勝で、1万ポイントを獲得しました。闘技場において、上位者と評価されるのは10万ポイント以上の保持者からとされております》

「優勝を十回なんて、簡単な話でもないんだろう? ポイントの交換で、何かいい特典が無いかって話だな。またランダムな箱でいい物でも出せればいいんだけど」

 今回は使えなかったが、ユニーク由来の貴重なアイテムまで出せるランダムボックス。
 アレももし闘技場のポイントで交換できるなら、ぜひとも交換しておきたい。

《──確認しました。残念ながら、原人も利用できるここでは存在しないようです。こちらに交換可能な物品のリストを》

「そっか……そりゃあ残念だ。まっ、それなら別の物を探せばいいか」

 送ってもらったリストを眺め、いい物が無いか調べてみる。
 闘技場専属の職人に依頼をする権利、レアなアイテム、高級ホテルの宿泊権……。

 うん、正直欲しい物が全然ない。
 とりあえず1万ポイントで何か欲しい、と思える物は無かった。

 そもそも、高額ポイントの商品には、一定の階級が必要とされている。
 つまりアレだ、勝利数を重ねて某闘技場のフロアマスター的な人に勝つ必要があった。

「昇級戦、みたいなものがあるのか」

《登録は一度でも闘技場を利用すれば行われます。それ以降も、ここでの勝敗で勝手に階級が変動したりします。昇級戦が主な方法ではありますが、優勝や一定の勝利数などでも昇級は可能です》

「裏技みたいな感じだけど、全員を上げたり下げたりするのが大変だからかねぇ」

 まあ、上位の階級は結局やり合う必要があるみたいだけども。
 前に聞いた話に出ていた、キングやチャンピオンなどはそれが必須らしい。

 うちの家族はいったい、どのあたりに居るのだろうか……今度訊いてみよう。


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