虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

多世界バトル前篇 その13



 少年ことソイドはショウと同じく剣士のようだが、純粋な剣術を磨いた休人らしい。
 剣技、ではなく剣術……つまり武技を前提とした戦い方のようだ。

 攻撃と攻撃の合間に武技を挟み、クールタイム中は自分の腕で勝負。
 また、ここぞのタイミングで半セルフの武技を用いては致命傷を防いでいる。

「なかなかお上手です。さすがは二回戦、先ほどの男性よりもご自身の戦闘スタイルを理解しているのですね」

「……なら、一発ぐらい掠れよ」

「それはできない相談ですね。生憎ながら、そうする義理も筋合いもございませんので」

 剣はことごとく俺のすぐ近くを通過し、何も斬ることなく戦いは続く。
 最適化された『バトルラーニング』は、そういった芸当も容易く成し得る。

 俺がいっさい反撃をしてこないことに、苛立ちを隠せていない。
 だが、“オートカウンター”が使えないので、反撃はセルフで無いとダメなわけで。

 予選のときはなんとか誤魔化す時間が用意できたが、ここでは一瞬の隙が勝敗を決めてしまう……命令コマンドを書き換えると、確実にラグが生まれるからな。

「仕方ありません。覚悟の上で、やらせていただきましょうか」

「! そこだ──“切斬スラッシュ”」

 俺が『バトルラーニング』へ指示を送ったその瞬間、生まれた隙を少年は突く。
 すぐさま反応しようとしていたが、体はそれに追いつかず──斬撃が体へ命中する。

 勝利を確信した少年。
 斬撃はもろに命中して、体を貫通しているほどに食い込んでいるからだ。

 しかし、浮かべた笑みはだんだんと強張り引き攣っていく……ゆっくりと、口が動く。

「な、で……どうして」

「企業秘密です。ですが、これだけは──まだ戦いは終わりませんよ」

「う、うわぁああああ!」

 埋まった剣をそのままに、俺は少年の方へ歩み寄る。
 必死に引き抜こうとしているが、恐怖で本来の身体能力を発揮できていない。

 対する俺は死後硬直というヤツで、通常よりも筋肉が固くなっている。
 それでも『バトルラーニング』が最適な動きを取ってくれるので、動作に問題はない。

「現在、私がセットしている[称号]の話をしましょう。死亡時に、辺り一帯に受けたダメージ分の爆発を生み出すというものです」

「……『人間、爆弾』」

「おや、ご存じでしたか? この能力、本来であれば当然発動者の方が爆発の中心に居るため、こういった場でも無意味なものなのですが……さて、何故そんな[称号]を私は付けているのでしょうか?」

「! やめ──」

 うん、まあそういうことだ。
 トドメの一撃は彼の斬撃と同火力の爆発を以って──こうして俺は、無事(?)に二回戦を突破するのだった。


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