虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル前篇 その06
それから何があったのか……俺の口から語られることは無い。
途中で女性同士の話し合いがしたいと、追い出されたからである。
現実で慰められたものの、当時は疎外感が尋常ではなく虚しくなった。
まあでも、二人が仲良くなったということで良しとしよう。
「そんなこんなで、今日はたしか初心者部門の終盤だったか?」
《現在は準々決勝、決勝まで今日中に行われることでしょう》
「新人たちがどんな戦いをしているのか……まあ、気になりはするけども」
《ご安心を。ドローンをすでに、複数機配置しております》
応援はしないが、これから伸びていくであろう新人に目をやらないのは愚策だろう。
解析をしてもらい、有用な能力などが無いか調べる予定だ。
俺自身が使うことは無いだろうが、エクリにインストールする擬似スキルにも映えが生まれると頼もしい。
「明日からは基礎縛りの部門が始まるから、あんまり明日に響くことはできなくなるか。となると……買い溜めか」
なんというか、いつも同じことをやっているのだが……そこら辺は気にしない。
ワンパターンではあるが、それなりに俺も楽しめているからな。
「けど、ここでのランクが低いから価値の高い物はあんまり得られないんだよな。裏の、非合法な物ならある程度買えるだろうけど」
ここだと現金よりも、闘技場での戦闘評価で得られるポイントの方が価値がある。
無尽蔵と呼べるほど稼いでいる俺だが、ここだと小金持ち程度なんだよな。
外部の客のため、それに賭けもやっているため金に価値がいっさい無いわけではないのだが……うん、貴重なモノは難しいな。
「となると、結局食べ物が主立った購入品になるわけだ。これをポイント制にすると、お客さんが全然食べられなくなるもんな」
《無差別部門に限り、料理のバフも効果を発揮します。そのため、コロシアムにおけるバフ付きの料理はポイント制のようです》
「強いヤツはより強く……ってか。まあ、それが嫌なら自分も食べればいいだけだしな。ある意味、準備の差ってことで切り捨てられるわけだな。無差別なのに」
上手いこと言ったつもりだが、俺には何ら関係ない話だった。
俺の場合──バフは基本的に『%』での補正だから──大して効果が無いからな。
そうこう言っている間に、場所は料理販売店が多く並ぶ区画になっていた。
入り口に使用する通貨が記されており、入ることのできる店がよく分かる。
高級感のある店でも現金が使えたり、逆にそうでもない外観でもポイント限定だったりと……あくまでも、バフ付きかどうかで決めているのだろう。
「食い倒れ……そんな死に方もいい経験か。よーし、明日に向けて食いまくるぞー」
そんなこんなで、今日は大したイベントも起きることなく終了する。
そして翌日……厄介ごとのオンパレードが幕を開くのだった。
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