虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
多世界バトル前篇 その04
休人たちが挙って集まり、我先にと受付に吶喊している。
速ければいいわけではないが、先に済ませておけば後の準備も早めにできるだろう。
受付周辺に集まる人々の目的は、大きく分けて三つ。
一つは登録、そして残り二つは観察と傍観である。
誰が登録をするのか、それを知ろうとする者たちも少し離れた場所で見ているのだ。
そして傍観者たち……うん、これは単にやることが無くて見ているだけだな。
「さて、行こうか──『ゴーストボディ』をインストール」
物理無効、障害通過の『プログレス』。
その力で休人たちの塊に入り込み、奥へ奥へと進んでいく。
なお、だからと言って真っすぐに行けるわけではない。
休人の中には、霊体に攻撃を通す武器を持つ者もいるからだ。
銀製、聖別された武器、そして聖具……。
それらは物理攻撃が効かないはずの霊体だろうと、容赦なく攻撃を通す。
前二つはそれでも、鞘に納めていれば無効化できる……が、聖具は存在そのものが聖気の塊なので、通常時で干渉が可能だ。
某王様の剣ほどの聖剣でなければ、休人でも打ち上げることができる。
なので聖具という名前から、それらを求める者も少なくない。
《聖具及び干渉可能な武具を検索──非接触ルートを構築します》
そんなわけで、『SEBAS』の力を借りながらどうにか厄介な武器を避けての移動。
正確には聖職者も厄介なのだが……単独で参加するこのイベントは難しいからな。
「──登録を、お願いします」
「畏まりました。では、こちらに手を──ありがとうございます。以降の登録は、皆さんの[メニュー]から行えます。明日までに必要な情報をご登録ください」
一人ひとりに掛けている時間がさして無いのだろう。
俺としても都合が良かったので、さっさとこの場から離れて登録を始める。
「名前は非公開でもいいと……タクマの言う通り、それだと報酬が減るのか」
《検証データによると、アイテムには変化は無いようです。あくまで順位に応じたサービスが、受けられなくなるとのこと》
「ああ、こっちでも確認できた。あのホテルとか、それ以外でもいい施設を使えるようになるわけだ……本当に強いヤツが優遇されている場所なんだな」
《イベント限定での評価は受けることができませんが、旦那様の闘技場での評価はそちらとは別で統計が行われます。こちらは休人・原人問わず、実力さえあれば偽名での参加でもサービスが受けられます》
原人たちもこのイベントに参加できるか、ここには原人が多く住んでいる。
そのほとんどが武人、そして戦う術を有する者たち……休人よりも強いヤツばかりだ。
彼らが今はその優遇されるべき地位に居るので、俺たちはそれを奪うために闘う。
果たして、勝てるかどうか……休人の限界が試されるな。
「まあ、彼らが参加するのは主に無差別部門だけだから関係ないんだけどさ。登録するのは基礎縛りと特殊生産部門っと……名前に関してはどうするかなぁ」
改めて考えるが、なかなか答えは浮かばない……明日までに決めないとな。
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