虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルイベント予告 中篇



 アイスプル

 運営が公式サイトに挙げている情報を、すでに『SEBAS』が確認している。
 特定のサイトであれば、ゲーム中でも見ることのできるEHOならではの現象だ。

 俺はハイな時に創っていたドリンクバーの機械から、二種類の炭酸飲料を注ぐ。
 黒いシュワシュワと緑色のシュワシュワがコップの中で混ざ……らず、禍々しい。

「ん……甘いな、そして美味い。やっぱりお一人様で飲むミックスジュースは格別だ」

《──情報精査完了。お待たせいたしました旦那様》

「待ってないからいいぞ。それで、今回のイベントはどういったものなんだ?」

 タクマから聞き入れた情報は、すでに伝えておいてある。
 それでも不明だった部分を、さまざまな観点から調べ上げてくれた。

《初めに、タクマ様の予想通り複数の部門に分かれておりました。それぞれの開催期間が異なるため、充分に楽しめることでしょう》

「けどな……ジンリが──」

《──旦那様のご活躍を、ご家族が応援成されるお姿をご想像ください》

「…………参加します!」

 さすがは『SEBAS』、俺では到底考え付かない素晴らしい意見を提供してくれた。
 そうだ、俺が家族を応援するならば、同じように応援してくれるはずなのだ。

 もしかしたら、俺の応援よりも仲間の応援が優先されるかもしれないが……ま、まあ、そういう可能性は無視しておこう!

「参加は決まったな。それで、部門は具体的にどう分かれているんだ?」

《無差別、基礎縛り、特殊生産、初心者部門となっております。なお、初心者の条件は一定以下のレベル及び転職数のため、旦那様は満たせておりません》

「そうか……大人げないと言われても困るから割り切ろう。基礎縛り、それと特殊生産がどういったものかは分かるか?」

《基礎縛りは無進化のスキル、そしてレベル向上による取得した武技・魔技の使用のみ認められる部門です。特殊生産は用意された素材でアイテムを作り、その生産者本人が戦う部門となっております》

 なかなかに面白そうな話だ。
 どちらも俺向けな部門であり、逆に熟練した奴らではやり辛そうだ……生産部門は、何が起こるか本当に分からないけど。

 俺は最高峰の生産系スキルを持っているものの、戦闘力でいえば世界最弱だ。
 他の奴らもそんな感じで、戦闘力と生産力のパラメータが調整されているはず。

 生産に力を入れれば、自然と戦闘力を損なうことになる……その極致が俺なのだが、周囲がどういった調整をしているのかが今回のイベントで分かるわけだ。


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