虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルイベント予告 前篇



「……この流れもだいぶ慣れてきたな」

「まあ、仕事中に話すとそっちに集中しちまいそうだしな。俺が何を言いたいのかは、もう分かっているんだろう?」

 タクマに誘われ、今回はファミレスへ。
 ……酒を入れるとEHOに支障が出るし、ドリンクバーで充分だからだ。

「こういうときは、イベントなんだろう? アレからだいぶ時間も経った……はずなんだよな。あんまり実感が湧かないんだが、まあそうなんだろうな」

「お前は毎度、濃厚な日々を過ごしていそうだからな……正直、イベントじゃ満足できないんじゃないか?」

「たしかに……最近なんて、間近で【勇者】と【魔王】の決闘を見たからな。おまけに二回戦は【勇者】対俺」

「……毎度毎度、本当に凄いな。【勇者】の出現情報なんて、マジで価値が高いぞ」

 あの世界の【勇者】様は、長距離の転移を自在に行う力を持っているらしい。
 その力で文字通り、世界中の問題を解決しているんだとか。

「まあ、その話は良いとして。今回のイベントはどういうものなんだ?」

「ふっ、よくぞ聞いたな。前回は総合的なモノだったからな。今回はもっと単純に──闘技大会だ!」

「……あっ、そ」

「お前、参加しないのは分かるけど……そこまでローテンションになるなよ」

 説明しよう、闘技大会には必ず結界が用いられる。
 内部で死亡した場合、強制的に送還されるという……つい最近見たヤツだ。

 なので、別に内部で即死するから意味が無いとかそういう理由ではない。
 それに対応した結界を周囲に纏えば、気にする必要は無いので。

「当日はハイテンションになるぞ? 息子と娘たちの晴れ舞台なんだしな」

「お前でも、制限有りの部門ならいい戦いになるんじゃないか?」

「それもそうなんだがな……まあ、当日の予定次第かな? 俺自身が戦わなくてもいいなら、参加してもいいけど」

「どんな条件だよ」

 笑っているタクマではあるが、俺は内心本気で考えていた。
 やっていることはバリバリで違法だが、それなら子供たちの活躍を見ていられる。

 何より、違法だがそれを成し得たのはすべて合法によるもの……ならば、ある意味セーフなんじゃないかと思っていた。

 この辺は後ほど、『SEBAS』と共に考えてみようと思う。

「仮に参加するとして、名前を晒されると不味いな……ジンリが動くだろ」

「ああ……名前はたしか、非公開設定にしておけば問題ないらしい。ああいうのは、目立つと困る場合もあるからな。その代わり、最後まで非公開だと貰えない物もあるらしいから、基本的にはみんな公開しているぞ」

「なるほど、自分から公開したくなるように誘導しているのか……まあ、さっきも言ったが方針次第だな。参加できるようなら、俺も参加してみるよ」

 ドリンクバーで淹れたコーラを飲み、しばらくして帰宅の途に着く。
 ……ログインしたら、あっちでもジュースが飲むことにしよう。


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