虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その08



『さぁ、お次のカードも注目だ! まずは相手が誰でも一度で倒す、『一撃』さん! 対するは休人初の『超越者』、見た目とは裏腹に武神の如き戦いをする『生者』さん!』

 なんだか盛大に盛られた紹介文を聞きながら、舞台の上で『一撃』と相対する。
 権能は握手をして解析したが、名前の通り一撃目を極限まで強化するというもの。

 分かりやすく言えば、一撃目に限って対象に当たりさえすれば勝ちということ。
 物理無効とか攻撃無効化といった小細工はすべて通用せず、当たれば即死なのだ。

「──本当にいいのか? 一撃を受けて、耐えるかどうかを勝負にして」

「私も『生者』を冠する者として、生き残ることに若干のプライドがございますので。子の挑戦、受けていただきます」

「いいだろう。ならば、私の全力を以って勝敗を着けようではないか!」

 そんなこんなで、俺たちは文字通りの一発勝負を始めることとなった。
 ルールは簡単、無抵抗に攻撃を受けて生き残ったかどうか。

 はっきり言おう、勝利は確定だ。
 ただしそれは、俺の心が折れなければの話である……『一撃』の一撃は、いろんな意味でガツンと来るらしいからな。

「では、始めよう」

「ええ、お願いします」

 根性、食いしばりと呼ばれる耐える感じの能力が存在する。
 こういう時に使えれば……と思う奴もいるかもしれないが、彼相手ではそれすら無駄。

 当たりさえすれば、ありとあらゆる因果を無効化して終わりをもたらす。
 人が最後の一撃と語るそれが、権能に昇華することで『最期の一撃』となったわけだ。

 彼が手をゆっくりと動かす。
 二本しか無い人族の腕──それが二本、四本とどんどん増えていく。

 最後にはその数は数えきれないほどに。
 しかし、想定はできている……その数は確実に千本はあるはずだ。

「驚かないのだな。【千手観音】のこの力を見る者は、誰もがそうしていたのだが」

「私の世界にはちょうど、その千手観音と呼ばれる存在を崇めている場所がありまして。ちょうどそこが、私の故郷なのです」

「……いずれそこを、訪れてみたいものだ」

「ええ、ぜひとも」

 千本の手で同時に行われる一撃。
 それは一撃でありながら千撃、しかも当たれば確実に即死となる。

 そのせいか、こうした挑戦を受けてもらえなくなるらしい。
 仮に受けてもらっても、千撃の方は使わせてもらえないそうだ。

「行くぞ──“連撃”!」

 そこに武技を乗せ、一つ一つの拳が複数の攻撃判定を生み出す。
 普通の方法では、避けることのできない拳の雨……俺はそれをすべて受け入れる。

「正気か!?」

「……どうぞ」

 そして、拳が俺の下へ到達する。
 そこで俺の意識は、プツリと途絶え──


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