虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

強者の宴 その02


「“■■■・■■■:プライスメーター”」

 エクリの『プログレス』の力を使い、モノクル型の能力を発現。
 効果は対象の値打ちを査定するというもので、その価値観は自身の経験に依存される。

 そこら辺は『SEBAS』と何度もやっているので、俺自身の審美眼が優れておらずとも、目だけはだいぶ肥えていた。

 先ほど語った白亜の宮殿の価値も、やはり相当に高いようだ。
 そしてそれ以上に、会場に居る参加者たちが身に纏うアイテムの価値が凄い。

 一番凄い物は査定不可、特典由来の品だったり……星由来のアイテムなどだな。
 そうでなくとも、一人一つは必ず億越えの価値を持つ物を持っている。

 それは討伐した魔物のドロップ品やら、迷宮で得た秘宝やら、レアな素材をふんだんに使ったアクセサリーだったり……まあ、いろいろだった。

「……しかしまあ、冒険世界だけでここまで多くの強い奴らが居るんだな」

 今まで見たことの無かった『超越者』、最上位職の持ち主たちが目の前にいる。
 戦闘狂だったら、挨拶をしていたかもしれないが……俺は普通に壁と同化している。

 スキルは使えずとも、可能な限り気配を消したうえで放出される身力を遮断。
 これだけでも、並大抵の奴らであれば探知できなくなる。

 ──まあ、ここに居る奴らは超一流、見抜ける奴らも居るんだけど。

「こんな所で何をしているのだ?」

「──少し、この美しい壁に見とれておりまして……」

「……ああ、こちらではその口調か。ハメを外し、気さくにしていればいいだろうに」

 そんな超一流の頂点に立つ『騎士王』が、俺に声を掛けてきた。
 彼女は王としての振る舞いではなく、一人の友人として語り掛けてきている。

 対する俺は、普段の対応とは違って敬語で彼女と話していた。
 それは対外的にどう見られているのか、それを考えてのものだ。

 もちろん、俺の敬語が取って付けてのものだということは、バレているだろう。
 それでもやって、相手が気楽にしていいと言うまではこれを貫くつもりだ。

「『生者』、もっと光の当たる場所へ出ようとは思わないのか? そのように、わざわざ人形まで使って……しかしその人形、かなりの出来だな」

「思いませんね。私は私では無く、もっと多くの方に広めたい者たちが居ますので。人形に関しては見ての通り、正装のようなものですよ。虚弱すぎる肉体よりは、こちらの方が幾分か長持ちしますので」

「だが、『生者』を表舞台で待つ者は多いのだがな。それは紛れもない、お前自身がこの世界でやってきた結果ではないか? だからこそ、その人形なので来たのだろう?」

「…………そう、ですね」

 良くも悪くも、『騎士王』は勘が鋭い。
 俺の目的のすべてに気づいているわけじゃなさそうだが、それでも企みを理解したうえでそれをやらせようとしている。

 そこまでお膳立てをされたならば、それに応えるのが筋ってものだろう。
 そう自分を納得させて、俺は彼女と共に壁際から離れるのだった。


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