虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

友人の悩み 中篇



 息子の次に相談してきた友人の拓真。
 その内容は非常に面倒、かつて別ゲーで結成していたチームを復活させようとする仲間に絡まれているとのこと。

「『渡り船』のメンバーを集めて、似たようなことをするのはいい。けど、まったく同じ名前で、望まないメンバーも巻き込んでやるのは許容できない」

「……リーダーがそう言っても、副リーダーは止まらねぇだろうさ」

「瑠璃もそう思っているけど、アイツ相手だとそうすぐには済まないんだよな……」

「瑠璃ちゃんの幸運って、ゼロに近い確率を百にするチートスペックだけど、絶対に無い可能性だけはどうしようもないからな」

 まあ、それでも基本的なことであれば、瑠璃自身のスペックの高さから大抵はゼロになることなどない……が、ジンリはそれを理解しているので、そのゼロを実現している。

 詳しいことはよく分からないが、それができるのが天才であるジンリ。
 俺が真っ向から戦おうとしても、普通に敗北する……不意打ち上等でやらないとな。

「で、そろそろ本題に入れよ。具体的にお前はどういう問題を抱えてるんだよ」

「……情報をしつこく確認してくるのもそうだし、スカウトを止めないのもそうだな。あとは、いつお前が来るか分からないから調べているのも止めてもらいたいな」

「そこまでしてんのかよ……うん、まあこればかりはどうしようもないんじゃないか?」

 外で見張りをしているのだろうが、店内はともかくそちらを止めることはできない。
 どこに居るのも休人の自由だし、システム的に問題となることが無いからな。

 無論、マナーとしては最悪だが、それだけなりふり構っていられない証拠でもある。
 何より、その程度で拓真が本気で怒るとは思っていないのだろう。

「──お前は俺にどうして欲しいんだよ」

「だから、それを訊きたいんだよ。別にGMに訴えたいわけじゃないんだ。たださぁ、お前のコネとして俺を使おうとしているのが気に喰わないんだよ」

「……ハァ、まあ直通なのはお前だしな。瑠璃はなんだかんだ言い包められるから、無理だと分かっているだろうし。仕方ない、いいアイデアを教えてやろう」

「…………なあ、嫌な予感しかしないのは何故なんだ?」

 失礼なことを言ってくる拓真だが、俺は笑顔をキープする。
 やれやれ、困った奴らだ……元リーダーとしてなんとかしてやりますか。

「よし、まずはログインだな。準備ができたらそっちに行くから、ちゃんと指示通りに動いてくれよ」

「……嫌な予感」

 何のことやら。
 家族も待っていることだし、早々に帰宅しなければな。


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