虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

指摘される改善点 前篇



 アイスプル 神・世界樹

「──というわけでして、反省会をやってみようと思います」

『好きにしろ……だが、わざわざここで行う必要があるのか!?』

「まったく無いけど、やっぱり冷静な判断をしてくれるヤツが居てほしいからな。アドバイザーとして、今回やってきたことを映像に出すから何か教えてくれ」

『……なぜそのようなことを』

 実に嫌そうな顔をしている風兎だが、その映像に他の守護獣が出ると言った途端に何も言わなくなった。

 まあ、小蜘蛛とイピリア以外の守護獣と会えていない現状なので、近況を知れるというのは風兎としても悪くないのだろう。

 そんなこんなで、『SEBAS』がいつものように撮影してくれた映像を投影。
 祭りでの出来事を見せながら、それらに冠する意見を貰うことに。

『──中途半端な縛りだったな』

「うぐっ……ごもっともで」

『たしかに、意地を捨てて目的を果たすという考えもある。だが、それにしても早くはないか? 何か一つにこだわり、その派生を考えるのもいいと思う。だが、お前にはまだ用いていない要素が多すぎる』

「……そんなのあったっけ?」

 今回、職業と称号と権能とアイテムといった要素をそれぞれ使い、森獣たちの試練を超えていった……が、それでもまだ風兎によればできることがあったらしい。

 正直、自分で考えてみても答えはまったく出てこない。
 もちろん、『SEBAS』に訊けば分かるだろうが……ここは風兎の正答を待とう。

『……なぜ、私や森の民たちに助力を願わないのだ』

「…………」

『奴らもただ、貴様に養われるだけを良しとはしないのだ。貰った力がある、だがそれを振るう場所がない……頼りにされていない、そう思ってもおかしくないのだぞ』

「それは……まあ、たしかに。でも、今までだって『SEBAS』主導でいろいろと実験に協力してもらっているだろう?」

 俺だって、彼らのことを放置しているわけでは無いのだ。
 アイプスルに居る間は、挨拶に行ったり頼みごとをしたりすることはある。

 だがそれが、今まではずっとこの世界の中だけだったということ。
 ……それにはちゃんとした理由がある、しかも二つほど。

「まず一つ、単純に死なせたくないから。俺は召喚士みたいなことができないから、仮初の状態で連れ出すことも不可能だ。彼らに覚悟があっても、俺はそれを許容できない……所詮は星渡りの民だからな」

『……二つ目は?』

「こっちは分かっていると思うが、俺たちと共に居る間に成長し過ぎた。俺の普通のキャパシティじゃ入らないし、擬似的に使役しようとしても無理だ。まあ、これはアイテムがあればどうにかなるけど」

 どうにか枠を誤魔化すアイテムは保有しているので、それは問題ない。
 だが本当に困っているのは、それほどまでの実力を魔物たちが有していること。

「……いつの間にか、どいつもこいつもギリギリまで進化しているし。いやはや、どうしてこうなったのやら」

『お前たちが恵まれた環境と力を与え、死なせることなく鍛え続けたのだから当然ではないか……』

 そう、強すぎるのが問題なのだ。
 もちろん、風兎などには劣るモノの、並大抵の相手では敵わない。

 だからこそ、俺もそう簡単には外に連れ出せないんだよ。


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