虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その16



 俺がやるべきことを果たしても、祭りはそれでも続いていく。
 誰もがそれぞれ抱いた目的を果たすため、それぞれの想いを以って行動するのだから。

「さてさて、溜まったデータの方を反映させておきますか」

 忘れられていると思うが、森の入り口である南区画で開いた力比べの店。
 サンドバックに仕込んだ『プログレス』の能力で、威力を測定していた。

 それ以外にも種族や職業の補正を計測し、『SEBAS』に処理を任せている。
 俺では想像のつかないことをやっているようだが、まあその辺りは委ねていた。

「……けどまあ、気になりはするか。具体的に今は、どういうことに用いているんだ?」

《主だっては知っての通り『バトルラーニング』の戦闘記録、他には鑑定の性能強化に用いております。また、動物型の機体などのバランス調整にも》

「……機体など、か。うんまあ、あまり派手にやらないでくれよ」

《心得ております》

 今なお、『SEBAS』が俺のためだと暗躍していることは多い。
 実際その通りなのは間違いないので、あえて細かいことは聞いていないのだ。

 迷宮に蔓延るユニーク種、こっそり行っているであろう案役街への干渉、そして今回のデータ計測……なんというか、物凄く暗躍しているよな。

「データ測定と言えば、強化してもらった加護も確かめないといけないな。便利な能力はより便利になったし、使い勝手が悪いと思えた能力も使いやすくなっただろうし」

《システム的な確認はすでに済ませております。旦那様には実際に用いることで、体感してもらいたいです》

「うん、それはやってみよう。水飴とか、食べながら散策するのも楽しそうだしな。あとはそうだな……素材の採取と出店の出し物で何かしておくべきか」

 ミニゲームイベントでやったようなことをクリアすれば、レアな魔道具を得られる店もいくつかある。

 どちらかというと獣人好みの物が多く、何より金を積めば得られるモノが多かった。
 ……さすがに、王家の宝物庫と比べるのは悪かったようだな。

「けど、掘り出し物みたいな物がチラホラ見受けられるな」

 古びた品だったり、価値を理解されていない物だったり……少々グレーな出店に並ぶそれらは、普通の職人では生みだすことのできないソレだった。

 悪戯レベルの雑魚魔物を呼び出す笛、相手にしゃっくりをさせるなんてジョークグッズだって、俺がその作り方をマスターできれば相当な力にすることができる。

「笛は指定した波長で特定の魔物を呼び出す代物に、しゃっくりの方は状態異常を確定で付与する……なんてこともできるかもな。あずはゲットして、それから調査だな」

 どちらも理論上は可能だが、できない可能性がある……しっかりと調べて、使えそうか確認しないとな。


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