虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その14



 強化された怪獣……ならぬ界獣。
 その姿、そして聖獣様からのヒントから察するに、加護に似たナニカが与えられた結果なのだろう。

 もともと神が用意した模造品。
 本来の[スノウエスト]ではない以上、可能性はあった……偽りの存在を生み出すのであれば、いったい何を基に創り上げるのか。

「災凶種に必要な要素を神の力で補っていたからこそ、その在り様を歪めることでこのようにできるわけですか。そして、注ぐ量と質に変化を加えることで、それまでとは異なる力を発揮させることができる」

 それこそが模造品の正体。
 集めているのであろう過去の情報、そして神の力で複製しているのだ……まあ、これに関する考察はまた別の機会に。

 今、俺が気にすべきはそれらを構築するために必要となる核となる部分。
 サイズが大きくなったことで、その反応は強くなっている。

《神気による変化ですが、それらは内部の核から行われています。『擬似神核』、ありとあらゆる概念に対応することができるため、精霊であろうと獣の姿であろうと運用することができるのでしょう》

 これまでは精霊の姿に同化していたので、そのエネルギーも感じ取りづらかった。
 しかし、変化したことでその差異から判明したのだ。

「つまり、弱点は……」

《核のある場所を画面に表示します。その場所に当てられれば、死の因果が確実に発動すると思われます》

「なら、そこを狙うしかありませんね!」

 搭乗する機体[アライバー]を動かし、改めて[スノウエスト]に挑む。
 獣となった姿の大きさは全長約二十メートルとのこと、ダンプカーよりも大きい。

 俺の[アライバー]はそれには及ばず、こちらは約十メートルと言ったところ。
 倍以上ある巨躯から振るわれる猛撃を、機体の自動操縦に委ねて躱してく。

 その間、俺は『SEBAS』が表示してくれた核の場所を確認。
 心臓があると思わしき位置に、核が置かれていることが分かった。

「全力全開です──『セットウェポン:斬首の死刀』!」

 腕部の『プログレス』が生みだす、武器の生成能力の対象を変更。
 地中から無限に生え出すその刀は、首を刎ねる概念を帯びた妖刀。

 それらを仕向けると、[スノウエスト]は対処に追われる。
 獣であるからこそ、首を刎ねたら死んでしまう……精霊では突けなかった攻撃だ。

「──“フルドライブ”!」

 そして、脚部の『プログレス』が有していた加速補正、それを十倍まで高めることができる能力を起動。

 元より十倍の補正がさらに十倍され、計百倍の加速を得られる。
 いきなりな上に、別のことに意識を向けていた[スノウエスト]は間に合わない。

「これで終わりです──『アームチェンジ:デッドタナトス』、“ソウルハント”」

 あとは腕部の能力を切り替え、生みだした死神の鎌を振るうだけ。
 正確にそれは、核となる部分だけを貫いたのだった。


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