虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その11



 少しだけ素が出てしまったが、気持ちを入れ替えて[スノウエスト]に向き合う。
 雪が降れば周囲を雪に染め上げ、その分だけ無限に生命力が回復するチート持ち。

 それでも、対策がまったく無いわけではないのはこれまでの戦闘で分かっている。
 直接攻撃では無効化されたように見えた事象も、今ならば別の見方ができた。

「置換能力で生命力が無尽蔵に供給されたからこそ、アレを無効化できたのです。火属性だからこそ、防げていた……そこを見誤りましたね」

 謹製の『死天』アイテムは、すべて俺の死因を基に生成されている。
 そのため、死因となった事象を当てなければ効果は発揮されない。

 今回の場合、火竜の擬似息吹そのものは命中していただろう。
 だが、その名称は『火竜の呑柱』、つまり全身が呑み込まれなければ効果は減衰する。

 置換能力と同時に発動している雪への変換能力によって、呑むこと自体失敗したのだ。
 あの時はすべてを吸収されたと言っていたが、『SEBAS』は気づいたらしい。

《──変換できなかった分は、しっかりと通じていたのでしょう。置き換えた分の雪が減少していたため、能力を暴くことができました。つまり旦那様に求められているのは、変換量よりも多く攻撃を送ることです》

「なるほど……了解しました。それならば、アイテムは全開です──[アライバー]!」

 単独生存特化型魔道操機。
 無駄に長い名前を付けたそれに搭乗し、戦闘を再開する。

 ……アインヒルドには悪いが、やはり普通の方法だと勝てないからな。
 オプションを付けやすいこっちの方が、広域殲滅には向いているんだよ。

「──『焦熱の死焔』、『吸死の黒霧』」

 何でも燃やす紫の炎、そして身力を吸収する黒い霧を飛ばす。
 それらは雪を燃やして呑み込み、増殖を防ぐように雪を糧に維持し続ける。

 俺が[アライバー]に乗ったのは、さすがに今の縛り中だと結界が耐えられない可能性もあったから。

 鞘の結界だけだと、この雪対策に起動したアイテムに対応できないのだ。
 どちらかだけならまだしも、二つの能力に対抗すべく両方を起動したからな。

 俺が真っ当な手段で生き残るために万全の準備が整えられた[アライバー]は、あらゆる干渉を拒む結界を常時展開するようプログラムしてある。

「これで一先ず、これ以上HPが増えることは無いでしょう……ここからが本番です」

 自分の変化なのだから、気づかないはずが無いのだ。
 事実、だんだん周囲の雪が動き出した……第二フェイズのスタートです。


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