虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭終篇 その05



 そして試練は幕を開いた。
 獣神様が求める内容は、かつて行われた神練と同様に一騎当千である。

『数はちょうど千、ただし数が減れば減るほど個体はすべて強化されます。そして、同時に倒すことができる数は十体までです』

「……それ以上を攻撃した場合は?」

『致死の攻撃であれば、こちらで回収して再出撃させます。その場合、最終的な強化度が上がると思ってください……他に何かご質問はございますか?』

「いえ。それで充分です──では、始めるとしましょうか」

 視界を埋め尽くす魔物の群れ。
 すべてに獣の特徴があるのは、やはり獣神様が用意しているからだろう。

 結界で体を動かし、強引に準備体操のようなことを始める。
 わざわざ魔物の前で、しかも弱者以下のクソ雑魚がやるのだから──立派な挑発だ。

 毎度のことながら、俺は魔物から見ると異常なほど腹立たしい存在なんだな。
 唸り声を上げる魔物たちは、やがて痺れを切らして──突っ込んでくる。

「最初はやっぱり『闘仙』──“地裂脚”」

 地面を強く踏み、仙丹を供給したうえでさらにもう一度。
 練り上げられたエネルギーは、強引に地を引き裂いて割れ目を生み出す。

 それこそが『闘仙』の仙術(物理)。
 再現の紛い物でしかなかったそれも、今ではしっかりとシステムに武技として認識される攻撃になっていた。

 ……属性攻撃として判定されたり、いろいろと便利ではあるんだ。
 俺の場合、特殊過ぎるものが多いので、これは本当に助かる。

 魔物たちは動きを止めることもできず、そのまま裂け目へ落ちていく。
 ……が、十体を超えた辺りで、裂け目が自動的に修復される。

「そういう仕掛けですか……では、続けましては──“天閃腕”!」

 もう一度踏みつけ、増幅されたエネルギーで武技を放つ。
 先ほどは脚で運用したが、今回は腕に回して勢いよく薙ぐ。

 本来なら群れを成した魔物なんて、一気に倒せただろうが……残念ながら、こちらも途中でバリアが構築されて無効化される。

「ふぅ……“仙功鎧”、“旋転波”!」

 仙丹を鎧として身に纏い、防御力を高めたうえで突進。
 移動するごとに再び増幅させ、掌から蓄積したエネルギーを放つ。

 これまでの二つと違い、威力は劣るが連発することができる。
 ノリでやっていた二つより、今回の試練には向いている攻撃だ。

「そして──“魔仙功”、“雪崩拳”!」

 仙丹に魔力を流し、性質が変化した。
 効果は攻撃すべてが貫通するというもの、それを腕に流した仙丹を小刻みに運用することで成し得るラッシュで魔物に打ち付ける。

 こうして、魔物はどんどん減っていく。
 だがその分だけ、強化もなされる……力押しはここまで、別のことをやらないとな。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く