虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その04


 間もなく、最深部へ到達する。
 便利過ぎる火の源素のランプが、魔物を撥ね退け……氷の壁を融かしてはショートカットをさせてくれていた。

 時間的に大幅な短縮ができたのだが、さすがにやり過ぎたようで。
 融かせば融かすほど、融けた部分から氷像系の魔物が出現してきたものだ。

 そちらは危機感など持ち合わせていないのか、火に臆することなく攻撃してきたが。
 それでも、ランプを氷像に突き出せばあっさりと水と魔石を残して消えていったよ。

「──おじゃましまーす」

『…………』

「うぉっ、とても神秘的な光景ですね」

 最深部の中は、不意打ちで出てきた氷像、そして新作が一堂に並んでいた。
 森獣がどこにいるのか、氷像だらけの中に隠れている……わけではない。

 無数に並ぶ氷像の内、どれか一つが森獣なのだ……本当、森の獣なのかと問われると微妙なヤツもこの森には混ざっているよな。

「この中から、見つけ出すことも課題に含まれるのでしょうか? とりあえず、やってみますけども」

 取りだすのは魔核レーダー。
 森獣たちは体内に魔核を宿しているので、それを基に探してみるのだが……。

「ふむ……いくつかに弱い反応ですか。これがダミーということでなければ、そういった能力ということになりますね」

 氷像を動かすために必要、というわけではない。
 ならば道中で見つけた氷像すべてが、魔核持ちなはずだからな。

 そうではないということなので、考えることは二つ。
 一つは分散させるための策、もう一つはそれをする意味があるという考えだ。

「ズルはできない……ということですね。ただ、ヒントを確認できていない以上、方法を考えないといけませんね」

 しばらく部屋をうろうろしていたら、壁に記述を見つけたのだ。
 内容はシンプル、これまでに見たモノを思い出せという物だった。

 だが、俺は思いっきりショートカットしていたので正しいものを見てはいないだろう。
 氷像は何体も確認しているが、あれって非常時の防衛システムなんだろうし。

「うーん、ここっていちおう子供も来るような場所だから……強引にやる手段はあまり好まれないはずだよな? というか、そんなことやったら怒られそう」

 思い当たる手段としては、火で温めて融かすというやり方。
 だが、間違いなく揉める……そりゃあ全部融かされたら、さすがにな。

「一定数以内で見つけられたら、許可が貰える。より少ない数で見つけられたら、加護が貰える。子供でも分かる、シンプルなルールだな……さて、どうやって見つけるか」

 使えるのはアイテムだけ。
 難しいが……やってみるか。


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