虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭後篇 その03


 氷穴の中は当然寒い。
 俺は耐寒性の高い服と結界があるので平然としていられるが、どうやらここは休人であろうとキツい場所のようだ。

 一部の厳しい環境だと、予め設定した苦痛緩和機能に変更が入れられる。
 寒さなら凍傷などの感覚が、暑さなら脱水感みたいなものを強めに。

 なのでしっかりと対策をしていないと、休人は余計に苦しむことになる。
 痛みを和らげているからこそ、急激な変化に耐えられなくなってしまうからな。

「まあ、それはそうと探索だな。定番の光源は人工太陽(極小)があるし、他のことも基本的に、源素干渉系の魔道具で何とかなる」

 光を弾丸にする銃やら、火や水などの自然概念を弾丸にする狙撃銃を創ってきた。
 それらに用いられてきた、観測が極めて難しい物質──源素。

 魔法にそのまま使うことのできない、扱いづらい物質を……俺は魔道具にしてある。

「:DIY:で源素を集めて、【生産勇者】の強化生産をする……なんて工程が無いと、普通に使えないとは思わなかったけど」

 普通に使う分には、銃などにしたときと同じように魔力を籠めればいい。
 だが、それを魔力無しで長時間維持したいと常日頃から考えていた。

「とりあえず、稼働用に魔石の欠片でも入れるだけで使えるようにはなったけどさ。一度点ければ、周囲の魔力で大気中の源素を取り込んで維持できる仕様になったな」

 魔法や魔術、そして仙術との違いは必要な媒介が存在しないこと。
 魔石の欠片を入れたのはあくまで、それを生み出すために使う装置の原動力だから。

 まあ、使うなら何らかのエネルギーを用いて加工する必要があるのだが。
 源素はあくまで素材、それをどう活用するかはまた別のことなのだ。

「今回は火素を灯すランプを使っています。ある意味、火そのものな分、本能で生きてる魔物には恐怖だよな」

 氷穴なので、出てくる魔物はすべて氷関係の個体ばかり。
 そんな奴らに火を向け、攻撃しても消えないし俺も死なない……異常だらけだ。

 そんなわけで、魔物は近づかないので安心して移動できる。
 あとは[マップ]機能でマッピングをしながら、ゴールを目指すだけ。

「置かれている宝箱だけ探して、ゴールに一直線だしすぐ終わるか。一番最後だけ、時間が掛かるだろうけど」

《すでに、ドローンが確認してあります》

「たぶん、全然人が来ないのかもな……適性のある獣人は来るだろうけど、初日とかに来ているだろうし」

 後からわざわざ二周目をする者も少ないだろうから、仕方が無いか。
 祭りが長すぎる弊害が、こういうところで現れるのだろうな。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品